ShinMakita

汚れたミルク/あるセールスマンの告発のShinMakitaのレビュー・感想・評価

2.2


1990年代後半のパキスタン。国内製薬会社のMRアヤンは、病院に出向いて医師に面会を求める毎日を送っていたが、最近限界を感じていた。医師たちはみな、高価でも多国籍大企業の薬ばかりを採用しているのだ。ブランド力には敵わない…と考えたアヤンは、一念発起して国際乳製品企業ラスタの営業職の採用面接に挑戦する。大学中退という学歴がネックだったが、これまでアヤンが開拓したコネと手腕が買われて見事合格。地元の小児科病院に乳児栄養粉ミルクを採用してもらうべく、さっそく営業を開始する。会社から接待金を渡されたアヤンは、病院スタッフや医師にバラまき好感を得ると、瞬く間にミルク販売の成績を上げ、上司からも褒められるようになった。新居も購入し、まさに営業マンとして順風満帆の日々。しかしある時、彼はある事実を知ることになる。パキスタンは水道の水質管理が不完全で、多くの一般家庭は、医師が処方する粉ミルクを汚れた水に溶いて使用していたのだ。そのため、ミルクを使用した乳児の中で、下痢症による脱水で死亡する事例が相次いでいたのである。ラスタはその事実を知りながら、何の注意喚起もせず闇雲にミルクの販売を続けていた。アヤンはラスタを辞職し、この事実を告発しようと決心する…



という「汚れたミルク/あるセールスマンの告発」を鑑賞。


実話の内部告発映画って、まあたくさんありますよね。マイケル・マンの「インサイダー」とかマット・デイモンの「インフォーマント」とか。しかしこの映画が普通の内部告発モノと違うのは、内部告発映画を製作する過程もドラマにするというメタ構造を取り入れている点。「汚れたミルク」の監督やプロデューサーらが、アヤンとskypeで会議して、映画を作るべきかどうかを議論しながら物語が進むんです。アヤン側の言い分に対し、充分に裏付けを取りながら慎重に製作する姿勢も見せているんですね。2006年の「汚れたミルク」製作準備中に新事実が発覚したりしてね。それが結構スリリングだったりするわけです。オチはややしょんぼり感が否めないし、ミルクに責任がないと言えばないわけで、ハナシとしてはちょっとパンチ不足だったかなと。ラスタが「ネスレ」のことであることをモロ出しした勇気と、老けたマリアム・ダボの格好良さに免じて、合格点はつけておきます。


しかし、1970年代からアフリカの途上国で既に分かっている「汚れたミルク問題」を、企業が90年代に入っても無視していたという事実はやはり問題だよなぁ。
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