はぎはら

わたしたちのはぎはらのレビュー・感想・評価

わたしたち(2016年製作の映画)
4.0
「わたしたち」。簡潔で良いタイトルだ。この映画は、仲間外れにされ、1人でいることをずっと受け入れてきた少女ソンと、同じ境遇の同級生ジアがお互い真の友だちになるまでの過程を描いている。

大人なら1人だって生きていけるし、楽しいことはたくさんある。だが、小学生が仲間に拒絶されたら辛い思いを引きずって毎日を過ごすしかない。主人公のソンは1人でいなければならない理由を見つけられずに苦しむ。優しい母親にも打ち明けられない。どう説明して良いか分からないからだ。揺れ動くソンの表情をカメラは映し出す。

そんな夏休み直前のある日、ソンは転校生ジアと出会う。孤独な星が引き合うように2人は仲良くなる。

夏休みという特別な時間が2人を急接近させる。毎日一緒に遊び、お互いの家を行き来するようになる。が、ある朝のソンの行動がジアの心を閉ざしてしまう。ジアが泊まりにきた朝、1人寝床を抜け出したソンはジアに食べさせようと母親に海苔巻きを作ってくれるようにせがむ。母親の膝の上に乗り胸に顔を寄せて甘える。

ジアが寝床からその光景を見てしまう。祖母に引き取られて暮らすジアは、母親に捨てられたのではないかと悩んでいる。ジアの心にソンへの嫉妬心が生まれるが、ソンはそれに気づかない。

ジアは塾仲間のボラと友だちになり、ソンを遠ざけるようになる。

ある日のこと、クラスの試験でジアがトップになる。これまでトップの成績だったボアは、ジアに負けることに耐えられない。ボアはジアを仲間外れにしようとする。

弱い者が自分の立場を危うくする者を標的にする。それがイジメを生み出す要因だが、もう一つは、同調者がいることだ。多くの人が排除される恐怖心から、イジメに加担してしまう。

ソンがイジメにあったのは、ウソをつかないからだ。ウソを強要しようとしても同調しないからだ。

ソンとジアがお互いの家族のことを理解しあって、もう一度友だちになる。

極力説明的なセリフを排して、小学生の内面を深く掘り下げて描写する演出は見事。
ソンとジアの成長した姿を見てみたい。
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