とうがらし

わたしたちのとうがらしのレビュー・感想・評価

わたしたち(2016年製作の映画)
3.9
キム・ボラ監督「はちどり」をきっかけに知った映画。
「はちどり」は話題になって、なぜこちらはあまり話題にならなかったのだろう?
「はちどり」よりも子ども目線で心温かく、時に胸が締め付けられるほど苦しくなる。
ちょっとしたことをきっかけに人間関係が崩れるのは、あの頃も大人になってもあるね。

被写界深度浅めなクローズアップが多いが、それほど気にならなかった。
背景に何があるか見えなくても伝わるのは、ユン・ガウン監督の力量だと思う。

即興演技がかなり入っているらしい。
脚本がものすごくしっかりしているからか?
子どもたちがそれを良く理解しているからか?
子どもたちの距離感が、刻々と変化していくのが手の取るようにわかる繊細な演出はすごい。
彼女たちがどこかに目線を向けただけで、観客はあっ!と察することができてしまう。
まさに映画ならではの演出。

カメラでとらえている世界は狭く小さいと思われがちなものだが、その世界に広がりと奥行きを持たせることができるのは、監督が子どもたちをよく観察しているからだろう。
ユン・ガウン監督は、韓国の是枝と言っても過言ではない。
マニキュアによる、不在者との心の距離感や時間経過の表現は、「誰も知らない」からの影響があるのではないだろうか。

キム・ボラ監督もユン・ガウン監督も、ほぼ同世代の女性監督。
ポン・ジュノ監督大活躍の陰で、着実に次の世代が育っている。
しかも、長編一本目から非常にクオリティが高い。
韓国は国家をあげて映画に力を注いでいるようで、経済支援制度や教育体制が充実し、作る側も、観る側も芸術文化の成熟度が増している。
一方、日本は……HIKARI監督や片山慎三監督など楽しみな存在はいるものの、国のバックアップが脆弱で、日本映画全体を見渡すと、遅れを取っている印象。
将来アジア映画をけん引するのは、韓国の女性監督たちになるかもしれない。
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