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なっちゃんはまだ新宿のslowのネタバレレビュー・内容・結末

なっちゃんはまだ新宿(2016年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

好きで好きでどうしようもない人。あなたが付き合っているなっちゃんって、どんな人?少しずつ聞き出した情報を目一杯に膨らませ、わたしの世界にむくむくと立ち現れる、なっちゃん。わからないけれど嫌な女であって欲しい。でも、あなたが好きになる人は良い女であって欲しい…という謎の補正も働きながら考え過ぎて考え過ぎた…なっちゃんって、こんな人?
手詰まりな恋は凡ゆる想像に背中を押され、止まらない恋敵の妄想は真夏の怪をプロデュース。完璧ななっちゃんは、欠点も完璧で、わたしの心も鷲掴み(?)。ああ、凄いや。わたしじゃ話にならないんだ。悔しいよ、岡田。あのね、岡田…

拍子抜けするような恋の絶頂と、待ち受けるハードル。藪から棒に現れるあなた。なんて、あなたは私に呼び出されたんだね。ごめんね。こんな答えあわせは嫌だよ。なっちゃん。

色恋沙汰の深みにはまり煮詰まっていたあきちゃん。なっちゃんは嫉妬の対象であり、自分の岡田への好きという気持ちがすり替わった存在だったのではないか。キスしようとしたのも、その気持ちが愛しくなったのかな。しかし、あきちゃんは恋の成就とともに、なっちゃんのことなど忘れてしまう。想像力は、音もなく、そっと、その力を失っていく。

時は経ち、岡田との結婚を意識し出したあきちゃん。でも、モヤモヤと落ち着かない…この不安な気持ちは何だろう?今思えば、バンドで歌も歌わなければ参加もしない。生徒会も委員長ではなく(うろ覚え)、大人になった今はマネジメント業。根っからのマネージャー気質なあきちゃんが結婚というイベントを迎え、ある意味舞台の主役になる時にその異変は起こる。「マリッジブルー」ならぬ「マリッジなっちゃん」としてあきちゃんの心にはその不安が、またなっちゃんとなって押し寄せる。「消費されないで」は、あきちゃんが初めてプロデュースしたなっちゃんという存在が社会に飲まれていくのが耐えられなかったから出た言葉であり、同時にあきちゃんの岡田を好きという気持ちが結婚という一大事に戸惑ってしまったことから出た、自分への言葉だったのかもしれない(そうなるとかなり結婚に対してネガティヴだ)。本当のなっちゃんは、想像よりも全然普通だったに違いない。違いないよ。
ところで、新宿という場所は何を意味していたのかな。何となく、くるりの『グッドモーニング』を思い出していたよ。

逆さのてるてる坊主?を作っているシーンで、「あと28」とか、「28のままだよ」という台詞がある。これは後半の年齢が28であることと、何か関係があるのか。もしかしたら、この物語は歌も歌えない独り言も言えない東京になっちゃんを呼び出して、結婚に向けて気持ちを整理していた28歳のあきちゃんの回想と妄想だったのではないか。最初から語りで登場していたのもそのあきちゃんで、全ては終盤の夜を彷徨うシーンの独り言だったのかもしれない。
あと意味深だったのはラストカット。岡田とあきちゃんが駅から出てくるのだけれど、あきちゃんが現れて、それをあきちゃんと確認できるかできないか、という微妙なところで暗転。物語は終わってしまう。これって2人は…とそれはまた違う物語。
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