Iri17

ゲット・アウトのIri17のネタバレレビュー・内容・結末

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

個人的にこの映画は『It』よりも怖い映画だった。ホラー映画に出てくる殺人鬼も殺人ピエロもゾンビも幽霊も巨大生物も、観客の存在したら嫌だな、もしくは本当にいるのかなを体現している訳だが、人種差別というのはこの世界に何千年も存在し、確実に我々の周りに存在している。日本人は無自覚である場合が多いが、我々は加害者になってしまっていることも多々ある。

この映画の白人たちもそうだ。黒人を劣った存在とみているのではなくて、一種の憧れを持っているのだ。だから白人よりも足の速い黒人陸上選手の写真を飾っていたり、オバマに3期目があったらいれるという話をするのだ。そんな憧れの黒人になりたい、支配したいという思いから、白人たちは黒人の肉体を奪うのである。しかし、そこには潜在的な差別感情がある。ヨーロッパやアメリカで長く続いた白人が黒人を奴隷として利用するという支配構造が確かに存在している。手塚治虫が『火の鳥』で描いたような人間とロボットの関係にも似ている。

タイトルのゲットアウトはヤバい白人の家から出て行けという意味の他に、自分のトラウマや自分を支配する人格から逃げろという意味合いが込められているのではないかと思う。気分が沈んでいる時、もしくは気分が上がっている時、まるで普段の自分とは違う自分になっていて、普段なら言わない事を言ったり、やったりすることはないだろうか。まるで他の人に体を支配されたように。この作品は人種差別だけでなくそういった我々にとってさらに身近な白人だろうが黒人だろうか黄色人種だろうが関係なく起こりうる恐怖を描いていると思う。

この作品は社会的な作品であるが、娯楽作品としてもとても優れている。コメディリリーフのロッドの存在や先の読めない展開が非常に面白い。

1つ残念なのはクリスが棉を耳に詰めて催眠術を回避するところ。手を縛られてるのにどうやって耳に棉を詰めたんだ!
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