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ゲット・アウトのmaiのレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
3.7
不気味すぎる映画だなぁと思ってビクビクしてたら…最後の15分くらいで怒涛の伏線回収が始まって、その考えのおぞましさと謎が解けた後の驚きとにおののきました。

まず冒頭の黒人と白人のカップルってところに違和感を覚え始めて、というか冒頭のシーンとポスターの時点でそういう胸騒ぎを覚えて…そして、あの街。
最初は何が何だかだったけれど、怒涛の伏線回収で合点がいって、そういうこと?!って驚きもしました。正直、ちょっとSFチックな非現実的な願望だし手術なんですけど、そこに隠れてる無意識的な差別ってのが透けて見えて…そういう感情とか思想の部分はリアルなものなのだろうなぁと思うからこそ、不気味だし怖かったです。というかおぞましい。

観終わった直後は、ゲットアウトの意味が初めと終わりとじゃ全然変わってしまうことに気づいて、練りに練られたストーリーや意図に凄まじさを感じました。
出て行け→出してってことかなって。

この映画の異質さってすごくって、人種を崇拝してるように見えて差別してるって仕組みなんですよね…大抵の人種差別扱ってる映画って「白人が全てのトップ」って描写なのですが、この映画は違うんです。
「黒人の身体的能力はトップ」と憧れの対象にしてるんです…その上で「自分たちの脳と彼らの脳を交換すれば、最高の人類になるんじゃん」と。アイデンティティも何もかもを踏みつけた考えを提示してくるわけです。一見、自分たちが高い位置に立ってるような差別ではないように思えるのだけど、実際のところは人種でその人を判断してしまってるという差別になっていて…この手の映画って少ないだろうし、私は初めて観たけれど、実はこういう差別こそ私たちの心の底に植えつけられていて、黒人だから運動能力が高い、アジア人だから身体的に劣る、白人だから賢い…って無意識的に人種でその人を測るってことやっちゃてると思うんです。私もそう思ってる節はあるし、それを差別だなんて思ったことなかった…けれど、それを今回の映画は「当事者」である黒人のクリス側から見ることができます。その異質さ・異様さったらないです。日本人(実際の日本人が演じています)がクリスに「アフリカ系アメリカ人に生まれた利点とかは?」と聞くのですが、彼はあしらいます。全編通して見ると、この質問がいかに問題をはらんでいるかが分かります。
そして、喋り方や仕草まで違うんです。白人は私達が思う白人らしく、黒人は私達が思う黒人らしく。そして、囚われの身になったかつての友人役の黒人の人も白人らしく。その使い分けに凄いなと思ったし、あまりの徹底さに周到さを感じました。

観終わった後に解説を読むと更におぞましさが増します。そんなところにメタファーがあったのか…と。
参考にしたサイト↓
http://lovekuzz.hatenablog.com/entry/2017/10/27/230041

とにかく、これは絶対にネタバレ見ずに純粋に映画を楽しむ気持ちで見始めてほしい映画です。予備知識なんか持たずに見ると、最後の伏線回収でスッと合点がいったときのゾワっとする感覚が味わえます。この映画の醍醐味はそこですよね…。
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