ユーライ

大殺陣のユーライのレビュー・感想・評価

大殺陣(1964年製作の映画)
4.0
映画のアクションじゃねえ!みたいな感じだ。映画のアクションは、カットで割ったり段取りとかテストを重ねて撮るごまかしが効くものだが、今作のクライマックスは文字通りの「だいさつじん」。泥まみれの中で逃げるエラい人を殺そうとしたり守ろうとしている人達がただひたすらにワチャワチャもみ合いへし合いをするショットを長回しで撮るという、恐らくは段取りもへったくれも無い方法を用いており圧倒される。そこで浮かび上がるのはひたすらに格好が付かない現実の殺し合いの風景。この方法論は後年の実録ヤクザ路線へと継承されていくものなのだろう。偶然巻き込まれたけれど徐々に使命に燃えていく男が合流する刺客の集まりは、字面から連想される格好良さは微塵もなく『十三人の刺客』のような、あるいは独立愚連隊ですらない頼りのなさ過ぎる面子でしかない。家族持ちの男は手に血を幻視しているし、坊主は決行の前の前まで女を追っかけて挙句殺している始末だ。他を見やればどこぞに落書きとして生の証めいたものを残そうとしている。どこまでも格好が付かない鉄砲玉の集まりだ。暴力に昂揚する男は無残にボロ雑巾と化す。逃げ出す奴もいる。享楽していた男が握りしめた刀を凝視、突撃してエラい人を殺しにかかるが相打ちに終わる。そして不毛なシステムのみが面子の為だけに継続していくうすら寒さ。ろくでもない彼岸が映し出された映画として記憶したい。
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