都麦

カーズ/クロスロードの都麦のレビュー・感想・評価

カーズ/クロスロード(2017年製作の映画)
4.7
流石に泣いた。ボロボロ泣いた。こんなに綺麗な回収とアレンジがあるだろうか。過去へも未来へも敬意がありすぎる。

マックイーンの華やかな飛躍から11年が経った。だからクラッシュがあってもなくても、そのときは必ず来ただろう。マックイーンが活躍し始めたということは、その数年後には当たり前に新たなマックイーンも現れる。そうしてクロスロードに立たされたとき、同時に三本の人生がクロスする。恩人ドックの意志を11年越しに知り、バトンを受け継いだマックイーンが、新たな才能を信じる。ドックが彼にしてくれたように。

『カーズ2』以降、マックイーンをみていると『カーズ』でドックが伝えた「自分以外の誰かのために何かしたことはあるのか」というセリフがチラつく。その言葉を受け『カーズ』のラストではクラッシュしたキングを救ったマックイーン。それはドックを救うことでもあり、マックイーンが初めて“誰かのために何かをした”シーンだった。
以降、カーズ2からマックイーンはきちんと相手に「ありがとう」を伝えるようになり、最後はドックと同じように誰かの勝利を願うパートナーとなって終わる。そしてそれが新しい希望、生き甲斐になる。

3話通じて、マックイーンがレースで優勝することをクライマックスに持ってきた物語も、そこに大義を見出す物語もなかったように思う。『カーズ』は生き方の物語であり、『カーズ2』は友情の物語であり、『カーズ/クロスロード』は生き様の物語。そして全編を通して、これは信頼と人生の物語。
ドックのクラッシュは彼からレースを奪った。しかしキングのクラッシュでは、マックイーンがそれを救うことでキングとドックの過去を救った。最後、マックイーンのクラッシュでは、彼はそんなものに負けず自らの意志でレースを選び、彼を新たな夢へと導いた。3つのクラッシュを経て、未来へと向かう構造だ。レースを扱う物語としてこれ以上があるようには思えない。

Disney/ピクサーあるあるのバカみたいな恋愛至上主義的描写もなく、マックイーンとサリーは互いに自立する平等なパートナー。そしてレースは男性のものから全ての車のものへと変遷し、最後は「気に食わない」とされていた女性レーサーの優勝を描く(且つクルーズに対して女だから云々/女だけど云々の説教たらしいバカ描写もなく当たり前のこととして彼女の人生と夢を見つめていたことが本当によかった)。『カーズ2』以降当たり前のように社会への細かい疑問も呈してるように見えて大変好ましい。

ちょっとすごすぎ。
都麦

都麦