YANAREN

光のYANARENのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
3.5

個人的には河瀨監督の作品は「あん」に続き2度目の鑑賞となった。万人受けするストーリーといえるのは「あん」の方であるが、この映画にはそれとは全く違った良さがあり、良かった。なお、永瀬正敏さん、樹木希林さん(声のみだが、重要な役どころ)は「あん」にもこちらにも出演している。

映画やテレビドラマには、視覚障害者に配慮した音声ガイド付のものがある。今作は、そのガイドの脚本を手がける女性、そしてそれを監修するモニターの1人である、視力を失ったカメラマンの苦悩と人生観の変化を描く物語。私は、音声ガイドとはただ場面を言語化しているだけだと思っていた。だがそうではない。そこには一切の主観が入ってはならず、なおかつ複雑な説明にならぬようなるべく字数を減らす必要がある。「余白」を残すことで、作品本来の世界観や作り手の伝えたいことを壊さぬようにするためだ。見える人の感覚とは全く違う。それを描くのがとても上手い。

また、「あん」の感想で書いた河瀨監督の「光」の使い方だが、今作ではそれが遺憾無く発揮されていた。この写真を見ればそれは明らかである。「光」と「影」の対比を、単に明暗で示しているわけではないのだ。演者の表情、仕草、その場の風景、音。そういったものと合わさり、視覚的に、また聴覚的にも美しい映画になっている。
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