なっこ

光のなっこのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
3.4
大切なセリフは全て予告編で聞いてしまった。でも、ただそれだけで、この映画を理解した、ということにはならない。

この映画は、一つひとつの言葉がとても重く響いてくる。

ひとつ一つの問いが重いのだ。

モノも、経験も、時間と共に増えていくものだと信じて疑わない者は、
失っていく怖さを知らない。
本当の怖さは、登り切った階段を一段また一段と降りていくことだ。踏み外さないように。次に降りる場所を見失わないように。

個としての人間の尊厳と誰かとつながることで生まれる安堵感とを、バランス良く描き出している。苦悩を生きる誰かを知った風な安易なセリフは言わせない。見える者に見えない世界、見えない者に見えている世界、そのズレを、少しずつ想像させていく。

問いに答えられないものは、自ら考えることから逃げる、“それは、誰かのため”とかいう曖昧な使命感や責任感を理由にして。自分には答えがないことから逃げる。自分が何を受け取ったのか、その心の内側を見つめ、表現することが出来ない。

心は確かに“軋んで”いるはずなのに。

視力を失っていく中森を通して世界を見ることで彼女の世界は広がりを持つようになる。そのことが映画を語る言葉を紡ぐことにつながっていく。
見えるものと見えないものをつないでいるのは、“言葉”という音なのだと、改めて感じさせてくれた素晴らしい映画。
なっこ

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