Yoshishun

氷菓のYoshishunのレビュー・感想・評価

氷菓(2017年製作の映画)
1.5
2017年邦画実写作品で最も興行的に失敗したとされる学園ミステリー。京都アニメーションによるアニメ版が有名ですが、あくまで小説の映画版として鑑賞。
評価で一目瞭然ですが、今回はほぼ酷評です。

何というか、終始寒い。この一言に尽きる。どういうことかというと、本作は恐らく原作の語り口をそのまま映像化しているのかもしれないが、終始説明口調でキャラクターたちが台詞を話すことに大きな違和感を隠せない。えるの決め台詞である「私、気になります!」や慧の「データベース」発言は現実の視点からみるとかなり痛々しく感じてしまう。また、奉太郎の考えるときの癖である前髪を触る行為も実写でみると不自然。そもそもそんなに前髪長くないじゃないか。

本作最大の不安材料であったキャストも予想通りの酷さ。やはりえるを演じた広瀬アリスはJKではなく、JKコスの若妻にしか見えず、最後まで慣れることはなかった。また、同級生二人もやけに老けており、これなら高校生よりも大学生という設定にすべき。しかし大学生という設定だとさすがに原作離れしすぎてしまうため、やはりキャストは主要勢はほぼ全員交代させるべきだっただろう。これに関してはキャスティングしたスタッフの責任でしょう。

また、アニメを既に観ていた側からすると、"えるの祖父がえるに伝えたかったこと"をメインで推理するのですが、やはりクライマックスとしてはかなり地味な印象を受ける。そもそも、このミステリーは千反田家の内輪事でしかなく、解決したところで、報われるのはえる1人だけ。約90分も引っ張る程のミステリーではないのだ。確かに古典部に直接関わる重要な回ではあるが、あのエピソードで行っていることとしては、「千反田家に集合して仮説の検証」→「当時の氷菓の著者に質問」ぐらいで、映画という媒体で描くにはあまりにも地味すぎる。

また、演出として明らかに低予算に思える部分も。70年代の街並みが現代とほぼ変化しない。明らかに舞台は同じで、服装だけ昔っぽくしているようにみえる。せっかくの本郷奏多の熱演も、演出の雑さで帳消しになっている。BGMも最低限しか流れず作品の冗長さを際立たせている。

そんな負の要素で溢れ返る本作ですが、唯一山崎賢人のみマシに思える。確かに斎木楠雄のキャラと大差ないが、無関心と無機質の塊である奉太郎のキャラクターにはマッチしていたと思う。それだけに最後の笑顔はいただけなかった。

やはり京都アニメーションの功績は素晴らしく、映画ではなくアニメかドラマ向きの題材であったと断言できる。大爆死も納得な非常に残念な部類の実写映画化でした。
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