マクガフィン

gifted/ギフテッドのマクガフィンのレビュー・感想・評価

gifted/ギフテッド(2017年製作の映画)
3.5
天才少女とその少女を守ろうとする叔父の物語。

天才として生まれた少女は、特別の教育を受けさせるか否かと、普通の子供生活を体験させてあげるべきか否かの教育方針の差異を軸とした中に、「本当の幸せはなにか」や「家族とは」「血縁の濃さの重要性」を問い掛ける。男と女の教育・子育て・将来に対する考え方の違いにも感じるテーマは興味深く面白い。
少女は才能に満ち溢れているレベルを超越して、 すでに開花している正真正銘な天才であることが問題を複雑にする。

一緒に生活する猫がモエやエモを振りかざすと思いきや、「猫のかわいらしさと癒しは全て私が演じるから大丈夫」と言わんばかりに、少女は数学並みに演技の才能を見せつける。また、感情表現が豊富で愛くるしいが、子供では対応できない不条理に対して、全身を使って怒りや悲しみをぶつける年相当の演技までこなして圧巻。大人に振り回される複雑な心情表現で深刻な問題を炙り出す。
猫は隻眼でゴミ捨て場から拾ったことと、アレルギーぐらいなことだが良いアクセントになり、それら全てがメタファーになっていることが上手い。

祖母と叔父の教育方針の対立は少女の親権争いの裁判まで発展するが、叔父と少女の仲睦ましい関係が伝わらないことが切ない。
大事なことは、少女が幸せかどうか第一だと思いつつも、子供は周りに流される傾向もあり将来のことを考えると本当に難しい。

テーマは興味深いがプロットの着地は無難で、祖母のヒールさは対立構造が分かりやすくて良いが、もう少しフラットに近く描いたほうがテーマを深化できたと思うことが少し残念。教育過剰の毒祖母ぶりは愛情が希薄だと感情移入は無理かな。

多様性を受け入れる折衷案はアメリカやハリウッドの現状を表しているようであるが、全編通して演出がとても良く、些細な少女と叔父のエピソードを積み重ねることにより、睦まじくも慈しみに満ちた絆は心温まる。