法月

ユリゴコロの法月のネタバレレビュー・内容・結末

ユリゴコロ(2017年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

この映画観て、以前武田鉄矢氏がラジオやテレビで語っていたエロスとタナトスの話を思い出した。

性の目覚めが遅かった子は、タナトス(ギリシア神話の死神。死への衝動)に魅入られてしまう危険がある。酒鬼薔薇事件の犯人の少年が、まさにそうだった、と.....

心の拠り所を「死」に置いてしまった少女、美紗子(吉高由里子)も、まさにタナトスに魅入られてしまった者なのだろう。
死への衝動が内に向かえばリストカットなどの自傷行為となり、外に向かえば快楽殺人となる。どっちにしても地獄だ。

美紗子の独白部分にはドキドキさせられた。快楽殺人者、美紗子の心の内を覗いているようで......観客は彼女の心情に寄り添って物語を追っていくことになる。こんな感覚は他に味わったことがない。
吉高由里子というキャスティングも絶妙だ。純粋さと毒を合わせもっているような存在、とても惹きつけられた。
「それからは料理をする側から料理をされる側に変わったのです。それは肉の解体作業と同じでした。生きたまま生肉になって、切り刻まれていればいいだけのことでした」
生きる(生活費を稼ぐ)ために娼婦となった美紗子の言葉が空虚で痛い。
人生の早い時点で、愛し、愛される相手と出会っていたなら、と、思わずにはいられなかった。


一方この映画は、松坂桃李側の視点の物語になると途端に魅力を失ってしまう。正直先が読めてしまったし、説明的過ぎだし、ご都合主義的過ぎる。凡庸なのだ。
結局トータルで見ると完成度の高い作品とはいえないけど、強烈な魅力を持った映画ではあるとは思う。吉高由里子が素晴らしいです。一見の価値はあり、です。


追記。金八つぁんのありがたいお言葉。
「年頃の子供を持つお母さんさんたち、ベッドの下から我が子が隠し持ってたエロ本を発見したらあー良かった!って喜びなさい、タナトスに捕まる前にエロスに捕まってホントに良かったって」

そのとおり、です( `ー´)ノ
法月

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