Canape

ユリゴコロのCanapeのレビュー・感想・評価

ユリゴコロ(2017年製作の映画)
4.0
人を殺めることで心の安定をとる女の人生の物語。ちょっとネタバレしているかもしれません。放り込まれる小さな生き物、溺れる子供、挟まれた子供・・怖さと衝撃に固まってしまいました。暗い穴に放り込んだいくつもの命をもっても埋まらない穴。気がつけばその穴の中に自分も転げ落ちて抜け出すことも出来ない。口から入れるはずのミルクが口からたれ流れた人形は、おう吐を繰り返す友人みつ子のようだった。垂らされた細い糸はその全てを抱えて彼女を優しい光の中に戻した。再び暗い穴に戻るなら、愛する人によって全てを終わりにしたい。跳ねのけることなくそれを受け入れたのは地獄に落ちたとしても幸せだったからなのかな。もう悲しくて悲しくてやりきれないのに、流れるのはありがとうと嬉しいが混じったような涙に見えた。怒涛のラストは、罪は許されるのか、殺人鬼の子供にも同じ血が流れているのか、幸せになる権利はあるのか、生き直すチャンスはあるのか、答えの出ない質問の壁打ちが凄まじい。自分で答えが出せなくても、誰か一人がその答えになりえるのかもしれない。苦しい心うちを綴った日記が思い出されてエンディングではよくわからない涙がぽろりしました。
素晴らしい出演陣で共感できないのに追体験しているようだったのと、脇の怪演といえば佐津川愛美が腑抜けども~からさらに進化し、今回のみつ子も吉高由里子に負けず劣らずそれはそれは強烈でした。優しさの塊でしかない松ケン、優しい顔から凶暴な二面性で血走った目の桃李もすごく良かった。でも血に注意。
下に載せた美沙子の日記、ネタバレの可能性があるので未見の方はご注意を。






美沙子の日記


小学生が死んだあの鉄蓋の溝で私はあなたを地獄に落とした
でも私がそうしたからあなたは私のあなたになった
あれがなければあなたは罪の意識をもたず汚らわしい娼婦の私と深くかかわりあうこともなかった

一体どうすればよかったのですか
あなたに出会うためには
あなたを地獄に落とすしかなかったのだとしたらそれも運命ですか
あなたに殺されることだけが私の救いです
Canape

Canape