Yucar

私はあなたのニグロではないのYucarのレビュー・感想・評価

4.2
ジェームズ・ボールドウィンがイェール大学教授の「なぜ人種にこだわるのか、人で見ないと、自分は人種で誤った分類しない」みたいな話に、その場で返してたシーンが本当にかっこいい。現に差別があるからこだわっている、平等な理想郷などないetcというようなことをめちゃくちゃ理知的で、冷静に、説得的に話して、人種問題に向き合ってない相手の白人教授は言葉失う。優位な立場にある人は社会的なマイノリティがなぜ声を上げてこだわってるか、今ある現実を理解しようとして向き合ってないと、あの白人教授のような態度になってしまう。あの白人教授みたいな、そんなに深刻な問題ない、私は個々人で見るし差別などないって言う、穏やかリベラル風で現状向き合わない耳障り良い論者が1番タチ悪くて、全ての差別や問題が存在してないかのようになる上、声を上げてる人が感情的で分別のない人かのようにされてしまう。声を上げてる人にだけ説得や説明の責任があるかのような構図にされてしまう。
他のマイノリティやジェンダーでも構造は同じ。穏やかに私は人種や性別でなく人で見ますよって言えるのは、社会的マジョリティで、かつ、無自覚に特権(マイノリティだけにある不利な部分に煩わされずに済む)を享受しているから。リラックスして説得してみなさいって態度はラクそう。白人教授みたいなリラックス系論者に、ジェームズ・ボールドウィンの受け売り出来たら、かなりかっこいいな。
ラストのニガーって捉えたい人は、ニガーが必要な人、ニガーって概念が本当に必要か白人は自問してみて欲しいって、沁みる。マイノリティによるマイノリティいじめ(人を見下して優位性確保したいもろい人)もこの構造。
差別ってそうそう無くならないと思うけど、自分の中の差別意識に向き合うことと、自分がマジョリティである場合に、ああいうリラックス系態度の傍観者にならないように気をつけることからかな。
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