Yoko

散歩する侵略者のYokoのレビュー・感想・評価

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
4.1
 イラストレーターとして働く”鳴海”の夫”真治”は行方不明になっていたが、ある日散歩しているところを保護されて家庭に戻る。
記憶喪失はたまた統合失調症に陥ってるような常識外れの発言をする真治に鳴海は戸惑いを隠せない…。

 黒沢監督の割にはとても明瞭な面白さを提供してくれたと思える作品。『回路』を彷彿とさせる演出が多かった。
大胆なCG(長澤まさみの乳揺れがすごいシーンがあるがあれは本物?)をガンガン使っている今作のあからさまっぷりをギャグとして受け止めることが出来る一方、何気ないコメディチックな言葉遊びゲームが人類の問題や人間の根幹を支えるモノを覆っているオブラートをじんわりと鮮やかに剥ぐ様子は良い意味で笑えない。
多くの作品でアンジャッシュ児島という「芸人」を起用する辺り、黒沢は「ギャップ」がもたらす魔法の使いこなしがいちいち上手いなと感心。
 また、長谷川博己演じる記者”桜井”の役どころが最高。
桜井が着こなすベージュ色を中心としたファッションから漂う「戦場ジャーナリスト感」がまさかああいう形に収まるとは。
あのシークエンスに様々な作品へのオマージュを感じてしまいニヤリとなる。

「万国旗」の下で聴衆に訴え終わった時の桜井の言葉がそのまま黒沢から観客へのニヒリズムなメッセージだと考えるのは早計で、人間が持つ微妙な力の存在を訴えてきた黒沢のメッセージが愛の強さだとするならばやはり今作は明快と言えるでしょう(ただ、この辺りはまだハッキリとした像がつかめない)。
最後の台詞とか言わせちゃうんだ!と思ってしまう自分からすれば、黒沢の「映像を使った語り」の楽しみ(玄関先の照明の使い方は良かった)をあまり感じられなかった印象は残るものの、話として純粋に面白かった。