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散歩する侵略者のkyoheiのレビュー・感想・評価

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
4.2
面白く、丁寧に作られたに見応えある作品。

古典SFホラー、古くは『ボディ・スナッチャー』にも通ずる冒頭から終始漂う不穏な空気感。その不穏さによる緊迫感を保ちながら、ちょっとした会話や演出で確実にビルドアップされる主要人物たちの境遇、過去、関係性。先を急いでエンタメに走ることもなく、間延びすることもなく絶妙なバランスで描かれていく中盤の展開が、後半におけるそれぞれの選択に重みをもたせる。そして、あくまでSFホラーという「劇画」としての面白さを失うことなく、フィクションの文脈内でのリアリティが、現実社会で我々が抱える問題や苦悩とシンクロし、今一度自分を振り返るようなメッセージを投げかける。「いい映画」の要素がしっかり詰まっている。

しかしラストシーンの切なさよ。答えはわかっているのだ。本質的には。それがなぜこうも捉えがたいものなのか。人類の歴史の中で繰り返されてきた「侵略/被侵略」の歴史にピリオドは来るのか。希望的であると同時に、ある種のやるせなさを感じてしまった。そこも含めて、この映画の狙いなのだろう。
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