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ミッドナイト・エクスプレスのtomoのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

どうしても自業自得感が強い。法を犯したのは事実で、逃亡など自ら罪を重くするような行動をとっている。刑期をほぼ終えて釈放目前に政治的事情で裁判がやり直しになった経緯は確かに気の毒かもしれないが、その再審では(事実より軽い麻薬所持の罪ではなく)本来問われるべき密輸の罪で正しく裁き直されたわけでだ。無期または30年という量刑が当時のトルコの法に照らして不合理に長いなら、政治的な理由で外国人を不平等に扱ったと言えるだろうが、少なくとも作中では量刑自体が不当という描写はない。麻薬密輸で懲役30年という刑期自体が不合理に長いという見方はあるのかもしれないが、それがトルコの法律なら、少なくとも外国から勝手にやってきて勝手に罪を犯した外国人が文句を言う筋のことではない。アメリカがどうだとしても、来訪した以上その国の法律に従うのが当然で、それが嫌なら来るなという話だ。作中では「もうすぐ出れる」と期待をもたせた弁護士や、刑期満了目前に再審にしたことを主に責めている文脈だが、お前が言うなと言う話。再審で逆ギレして「もう罪は償ったと思う」と発言する所など盗人猛々しいなという感想しかない。それを決めるのはお前じゃない。
懲役中に虐待や人権を無視した扱いがあったことは明らかに問題で、そっちを強調した話ならまあわかるけどね。
という感じで全く主人公に同情できなかったが、多分この映画の見どころはそういう倫理的・社会的側面ではなく、主人公が劣悪な環境で希望も友人もなくし正気を失っていく様と、最後に希望を取り戻し諦めず脱獄するドラマにあるんだろう。確かに絶望の淵の追い込まれる経緯・演技は見応えがあった。一方で希望を取り戻してから脱獄するまではあっという間で偶然の産物感も強く、ガールフレンドの慰めも(おっぱい以外)どこがそんなに刺さったのかよくわからんかった。「アルカトラズからの脱出」とかの方がずっと不屈の執念が感じられて面白いよね。
ざっと調べると、元になった実話や本人の原作自伝よりもトルコ側が悪く書かれているらしく、映画公開後に本人が謝罪したりしてるらしい。映画での唯一のトルコ側の汚点が刑務所での扱いの酷さだったのに、それも怪しいならますます自業自得じゃんね。原作を読んでないのでわからないが、そういう経緯を聞くと、本人も辛い経験を書き残したかったんであって別にトルコに責任転嫁つもりで自伝を書いたんじゃないんじゃないの、映画を見栄えよくするために余計なことして各方面に失礼なんじゃないの、と気になった。
演技の見応えに免じてこの点数。
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