中庭

いぬやしきの中庭のレビュー・感想・評価

いぬやしき(2018年製作の映画)
1.5
佐藤信介の傑作『アイアムアヒーロー』に散逸していた、一つのショット内における映画的な勝利を達成している瞬間があまり見受けられなかったように思える。興奮すべきは空から降り立った犬屋敷が地面を転がり、勢いのまま走り出して再び飛び上がり、壁にぶつかりながらも佐藤健から必死に逃げる過程を単一の画の内で繋げた場面。CG俳優と実在の俳優の繋ぎ目の処理技術が逆に露呈することで、その効能が強調されてむしろリアリティの脱構築作用が進み、映画を映画として見つめさせる力を発揮する。肉体から機器が直接突き出すより視覚効果よりも、よっぽど説得力が増す。興味深かったのは、CGを用いた格闘シーンよりも、日常を映し出すシーンのモンタージュの方が速度的には激しかった点。木梨憲武ほか共演陣に比べ、圧倒的に表情の無い演技を続ける佐藤健の顔の強度が群を抜いて高かった。
ヘリコプターから落下した女子アナの画面奥への消失と断末魔は、少しトラウマになった。
中庭

中庭