まお

いぬやしきのまおのレビュー・感想・評価

いぬやしき(2018年製作の映画)
3.7
原作ファンではないですが、たまたまWOWOWでやってたので視聴!

冴えないおじさんとイケメン高校生が突如現れた謎の生命体とぶつかったことにより、人間ではない超人的パワーを秘めた機会人間に!

本作では妻からは頼りにされず、娘からは嫌われ、息子からも愛想を尽かされ、唯一の理解者は飼っている柴犬のハナコのみという、悲しい冴えないおじさん役を木梨憲武、大人しく母親思いで普通の生活を送っていたものの、唯一の親友のイジメによる不登校や、シングルマザーであるが故に経済的に恵まれず、世の中のあらゆることに不満を貯めていくイケメン高校生を佐藤健が演じています。

おじさんが世界を救う主人公でイケメン高校生が世界を破壊する悪役という前代未聞の設定!世の中の肩身の狭いお父さんたちに勇気を与える一作。家族のために働くお父さんたちはぐっとくるシーンがたくさんあるのではないでしょうか!?

木梨さん演じる主人公「犬屋敷」も佐藤さん演じる悪役「獅子神」も決して人生の表舞台に立っている人間ではなく、どちらかといえば、社会においてどこかに置いていかれてしまったような、疎外されてしまった人々である。

どちらも同じような立場に置かれながら、犬屋敷は人を救うことに力を使い、獅子神は人を殺めることに力を使う…そうした善と悪に別れてしまった理由には何があるのか。
犬屋敷には守るべき家族がおり、世の中に対する大きな憎しみも抱かずに済んだこと、夢も希望もないが、今の生活から抜け出したいとは思っていないこと。
獅子神は唯一の家族である母の苦労を目の当たりにし社会への不満や、今は別の家庭があり自分とは異なった裕福な生活を送る父親への憎しみ、犬屋敷とは正反対のこの世界を変えたいという強い願望があること。
そうした2つの相違が善と悪という全く相反する存在に2人を分けてしまった要因かなーと。

本作を観ていると、どうも獅子神に感情移入せずにはいられないのは、わたしがおかしいからでしょうか?笑 母親想いの彼が彼の起こした事件により、母親を追い詰めてしまった様は悲しいったらありゃしない。どう考えても獅子神が一家を惨殺しなければ済んだ話なのに、獅子神をここまで追い詰めてしまった世の中を憎みさえしちゃう。そう思わせるのは佐藤健の眉間に皺を寄せ、何かを思い詰めたような切ない表情にぐっとくるからなのか…いやー佐藤健恐ろしや。

そしてコミカルにかつ世の中のお父さんの肩身の狭さを一気に代表して表してくれた木梨憲武にもあっぱれ。朝食の味噌汁を飲めない(機械の身体なので塩分には弱いため)といった苦い表情は何故か可愛らしささえ感じました。特に笑うシーンではないのに面白い!素晴らしい役者さんですね。
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