TaiRa

犬ヶ島のTaiRaのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
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一回観ただけじゃ全部把握出来ないくらい画面内が豊かで楽しい。吹替で観直さにゃ。

ウェス・アンダーソンのスタイルには慣れてるつもりなのにまだ新鮮に感じさせる。近未来の日本が舞台だけど、かなりウェス独自なネオニッポン感が愛らしい。人形の動きも敢えてぎこちなさを残す。カチッとした動きが日本人のカリカチュアでもある。小林市長の陰謀によってゴミ島へ捨てられた犬たちと愛犬を探し求める市長の養子アタリ少年の反逆の冒険。子供たちと犬による腐敗した大人社会への革命。子供メインだし『ムーンライズ・キングダム』に近いかな。子供と大人の対立や軋轢を描いて来たウェスだけど、今回はかなり直球。父と息子のテーマも継続。犬インフルエンザを作り感染させ、その犬たちを迫害する事で大衆の支持を集める政治家というのが正に今の日本っぽい。敵をでっち上げて大衆を扇動する。博愛主義の子供たちは犬を守り、絆で結びついた犬たちは少年を守る。アタリ少年と愛犬スポッツが初めて出会う回想のエモさ。人形の流す涙に泣かされる。カメラの縦横への動きの気持ち良さ、間の抜けたやり取りの可笑しみはいつも通り素晴らしい。日本映画オマージュなんかもちょこちょこあったり。ライティングもクラシカルな部分があったりして古風な印象を与える。役者のあてる声も文句なし。ブライアン・クランストンの声とスカーレット・ヨハンソンの声が絡むハードボイルドな色っぽさが堪らん。
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