しちみ

許された子どもたちのしちみのレビュー・感想・評価

許された子どもたち(2019年製作の映画)
3.2
想像していたもの、期待していたものとは全然違う仕上がりの作品で意外だった。
何年も前から見ようと思っていて、ようやく見たんだけどちょっと難しいというか私には理解しきれなかったな。

イジメの末、勢いで相手を殺してしまったキラにフォーカスを当てて物語は進んで行くんだけど人間の心理的に加害者側にフォーカスが当たるとだんだんそっちに感情が移入してくるようになるから、それが個人的にマジで嫌だった〜〜
何をどう考えても100%キラが悪いし、2時間強の作品でただ加害者側がいかにクソ野郎なのかを描きたかったのか?とも思うし、逆に加害者側にフォーカスを当てて加害者だからといって私刑はダメですよ、加害者にも人生や家族、未来があるんですというメッセージ性を持って作ってるだとしたらイマイチ物足りなさを感じる。

全体的に全ての人間が少し間違っていて、その間違いを正す人間が誰1人もおらず結局全ての展開で最悪な結末を迎えることになったんだと思う。タイトルでもある「許された子どもたち」になってしまったことが大きな間違い。表面上だけ許されたことになっていただけで世間も被害者もそれでは納得しないし、何よりも本人たちに大きな負荷をより掛けることになったと思う。
弁護士もキラの両親も学校も同級生たちもみんな少しずつ間違っていて、誰も声をあげれる人がいなかったんだな。

被害者遺族へも世間からのバッシング被害が起きてることを描いていたのは良かったし、話の内容として煮え切らないところは多くあったけど最後のエンドロールを見ても分かるように相当少年犯罪について勉強をしてこの作品を手がけたんだなとは分かる。特に加害者本人、加害者家族の認知が歪む描写が非常に上手かった。キラ自身が自分をコントロールできていない、自分の気持ちや自分へのイメージなどが大きく歪んでいて行き着く先が暴力や怒りのみになっている。
本来ならばそれを制御したり、向き合わなければならない母親もキラはこういう子なんだよと強い認知の歪みがあり、キラ自身もその母親からの認知を跳ね除けられない。
少年犯罪のメカニズムや内容、事件前後、被害者遺族の動向など本当によく描かれていた。

被害者遺族には全くフォーカスが当たらないのも個人的には新しく感じた。
内容も悪くないし、前述した通り相当な知識を入れて作った作品だと思うし、だからこそ2時間強の作品でこうやって終わるのかーーどういうことだーってなってよく分からなかった。難しい。けどイジメは絶対ダメ。
しちみ

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