Floria

カーゴのFloriaのレビュー・感想・評価

カーゴ(2017年製作の映画)
4.1
感染から48時間で発症しゾンビ化するウイルスの流行した世界。主人公アンディはゾンビ化した妻に噛まれ、二日間で娘の安全を確保しなくてはならなくなる。

ゾンビ映画ではなく、荒廃した世界での家族愛を描いた作品。ジャンルは終末ものといったほうが近いかもしれない。派手なシーンはほとんどなく、むしろ、ゆっくりと破滅へと向かう世界の静けさ、穏やかさが心地良い。政府から配布されているらしい対策キットなんかもでてきて、感染とゾンビ化がとても身近な現象なんだと感じられるのも面白かった。そして最大の魅力は、やっぱり人間ドラマだろう。守るべきものを持ったアンディの強さ、そして、彼に同行する部族の少女トゥミの真っ直ぐな優しさがとても好きだ。

原作が短編映画というだけあって、ストーリーはとても単純だ。私はこの映画がかなり好きなのだが、否定的な感想が目立つのは、ストーリーの単調さと構成の甘さみたいなものに依るのかもしれない(原作短編が良すぎるというのも勿論あるだろうけれど、まあそれはそれ)。特に前半はスピード感みたいなものが全くない。それでも、長編化するにあたって、映像映えする派手なシーンで引き延ばすようなところがないのは却って好印象だった。一方、白人と先住民との関わりをテーマとして押し出すなら、もう少し丁寧な描写があっても良かったのではないかとは少し思う。部族の風習や死生観には興味深い部分がありそうな気がしつつも、いまいち入り込めなかった(単に私が知識不足なだけかもしれない)。

ストーリーと映像の地味さは少し人を選ぶかもしれないけれど、十分に魅力のある作品だと思う。結末ははじめからわかっているのだけれど、それでも希望の見えるラストに胸がいっぱいになった。荒廃した世界で、それでもきっと大丈夫だと思わせてくれる、力強さのある作品だ。
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