やしまんく

三度目の殺人のやしまんくのネタバレレビュー・内容・結末

三度目の殺人(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

冒頭の燃え盛る炎に照り返される役所広司の表情もすごいが、つづくタクシー内の狭い空間にぎゅうぱんに詰め込まれた三人のキャスト力(ぢから)が強すぎる……
さらに次から次へと、出てくる出演者が豪華なのに演出過剰にせず想像の余白を十分にとっているところに監督の手腕を感じる。

序盤、優秀な弁護士達のやり取りを通じて減刑を勝ち取るプロセスを分かりやすく提示。
とりわけその中でも福山雅治演じる重盛が敏腕オーラを漂わせている。

この重盛という男、裁判においては真相の追求、被告人の心情・背景への理解などは無駄と切り捨てる。
すべては弁護側の勝利のための材料として有用かどうかで判断するという冷血さを持ちながら、その一方で娘には生命に対する道徳心を白々しく説くというスーパー割り切りマンなのだ。

しかし、重盛は事件に踏み込むにつれ、事件の特異性や被告人三隅の並外れたとらえどころのなさ、被害者の娘咲江の投げかける本質的な問いとあるゆる方向から揺さぶりをかけられ、もともと持ち得ていた視座への確信を失っていく。

関わるもの全員に対して最大公約数的な司法制度があってこそ重盛の優秀さは機能している。
その重盛が事件とそれに関わる者達に翻弄され、機能不全を起こしていく様を通じ観客は司法制度そのものに対しての疑問を抱かせられる。
最後の公判のあと、裁判所を出た重盛の顔を照らす炎のような夕陽の光が印象的でした。


いやしかし、面会室での三隅と重盛の近づかせ方、うまいですね~~~~~~~~~~~~~!!