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三度目の殺人のsumiccoのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
3.8
映画の最初の方で
福山さん演じる弁護士のセリフ。

それは多分、
弁護士という職業が叩かれる理由であり、
若かった頃のあたしなら
「サイテー」と感じていたと思う。

真実こそが大切で、
真実を隠すことが悪人の性なら
真実を究明することが善人の義務だと
そう信じていた頃に観ていたら。

この映画は敗北の味がすると思う。


これとはまた全然違うテイストの
"99.9" という弁護士ドラマがありまして、
その中に、名探偵コナンを
ぶっ覆すセリフが出てくるんですよ。

「真実なんか興味がない。
 100人いれば、
 100通りの真実がある」

だいぶ、
あたしの中の"真実"の価値観が
変わったんですよね。

第三者にできることはせいぜい
『事実を明らかにすること』程度で、
なんのために、とか
なにをきっかけに、とか
なにを考えて、とか
そんなものは全部、
誰のどのタイミングでの言葉の
どの部分をどんな風に感じ取るかで変わってしまう、
とても危ういものなんだと。

そして
それを大前提とした上で、
あたしたちは各々の判断で、
『自分はなにを信じるか』を決める。
それこそがきっと、"真実"で。

自分だけの、が許されるのが、
むしろ、
真実の醍醐味なんじゃないでしょうか。

作中で満島くんが投げかける、
「生まれてこないほうがよかった命なんてあるのか」
という問いかけの答えも、
誰の視点からどの命を見るかで、
180度変わってきますしね。


全体的に暗く、重く、
幸福感や爽快感からは程遠いため、
特に誰かに勧めるつもりはない、という意味で
3.8 の評価をつけましたが、
あたし自身は10年後あたりに
再鑑賞したいと思います。
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