青二歳

バレエ・アダージョの青二歳のレビュー・感想・評価

バレエ・アダージョ(1972年製作の映画)
4.9
多作家のノーマン・マクラレンは晩年に三つバレエを素材にした作品を残しています。
その二つ目が“バレエ・アダージョ”。アニメーション技術はなしで実写をスローモーション撮影しただけ…かと思いきや…

NFBの公式HPによると、振付はアサフ・メッセレル(Asaf Messerer)。ボリショイで不遇だったバレエマスター。マイヤ・プリセツカヤの叔父。彼女を師事するだけでなく両親が粛清された後面倒をみた血筋です。プリセツカヤを引き取った妹のスラミフィ・メッセレルは東京バレエ団の指導もされた方。
東京バレエ団のレパートリー“白鳥の湖”にもアサフ・メッセレルのクレジットがあります。東バの白鳥はボリショイ流儀なんですね〜
さてそのアサフ・メッセレル振付。クラシカルだけど70年代ソ連バレエの振付にしてはコンセプチュアルな小品。リアレンジはダンサーのデビッド・ホームズ。奇抜なパもないし、ダンサーも丁寧なので普通にバレエ作品として鑑賞できます。
…なんて、そのままコンテンポラリーを鑑賞したかのようにスルーするところですが…不思議なことがある…それは音楽です。音楽は有名な“アルビノーニのアダージョ”。スローモーションで見るダンサーの動きにとても合っていて幻想的。
ですがこれよくよく考えると、実写のバレエ・アダージョをスローモーション撮影しているので、実際はもっと短いはず。正味5分より短いんじゃないかな。なのにまるで“アルビノーニのアダージョ”(約10分)のために振付られたかのように“見えてしまう”。つまり、この振付の元の音楽が消失している。スローモーション撮影にしただけで元の振付の音楽を消し去り、別の作品に仕上げてしまっているという事になります。
これはすごい事です。参った…やられたよマクラレン…

バレエを観ない方にはピンとこない説明で申し訳ないんですが…えーと…例えばAKBとかアイドルのものの5分のJPOPのなんかの曲(昨今の知らんくて適当すみません)に合わせたダンスを、スローモーション撮影で10分に引き伸ばして、さも最初から"別の10分の曲のために振り付けられた"ダンスかのように"見せて"しまうという事です。あぁ余計分かりにくくなった…
伝われ( ̄∀ ̄)

ちなみに何故マクラレンのバレエ三作の中でこれだけアニメーションタグを除くかというと、使われている技法がスローモーション撮影のみなので、これだけをもってアニメーション技法とみなすかどうか寡聞にて知らないので。
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