Kientopp552

ハリソン・フォード 逃亡者のKientopp552のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

リメイクはオリジナルには敵わない!

 このリメイクの本品のストーリーは、モダナイズされている。製薬企業の新薬の販売拡大に片棒を担ぐ同僚によってけしかけられた元警官の殺し屋が、有能で善良な医師Dr.キンブルの美しい妻を殺してしまう。このことが、キンブル医師に不利な状況証拠から、キンブルが自分の妻を殺害したという冤罪となってしまう。こうしてキンブルは濡れ衣を着たまま死刑執行台に送られることになり、本作のストーリーは、更に展開する。

 オリジナルのテレビ映画シリーズを知らない人は、このB級映画の本作のストーリーで十分満足するかもしれない。しかし、日本で1964年から67年まで放映された『逃亡者』で主役のDr.キンブルを演じる俳優デイヴィッド・ジャンセンの、あの陰のある、悲しそうな顔と、目立つのを恐れながら、控えめな態度で片腕の真犯人を探すジャンセンの雰囲気と態度を知っている者には、このリメイクの「Dr.キンブル」像は、大いに物足りないのである。

 大体、リメイクのストーリーは、少々太り気味のH.フォードが片腕の真犯人を探すことに集中しているのに対して、オリジナルではそのフォーカスは、逃亡中のジャンセンが関わりたくないのであるが、状況のなせる業で仕方がなく様々な人間関係を切り結んでいくことになるという、そのヒューマン性にあったのである。

 この点がリメイクでは全く希薄であり、せっかく名女優J.ムーアを使うのであるならば、あんなチョイ役で終わらせるのではなく、そこから筋を別に広げてもよかったのではないか。

 機会があれば是非オリジナルの、あの冒頭のシーン、Dr.キンブルが逃亡者となり、とあるガソリンスタンドの薄汚い洗面所で、髪を黒く染める場面と、その、切羽詰まった状況を説明する、緊迫したナレーションをもう一度聞きたいものである。
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