さぃもんす

海辺のリアのさぃもんすのレビュー・感想・評価

海辺のリア(2017年製作の映画)
1.5
舞台のDVDを見ているようだった。課題じゃなかったら絶対に見ないような映画。案の定、若い子は私しかおらず仲代達也さんが好きなんであろうおじいさんおばあさんしかいなかった。

1時間40分を5人の役者、海・道路・家・車内・施設だけで見せるのは無理があるだろう。おじいさん、おばあさんは画面がころころ変わらず、登場人物も少なくて見ていて混乱せずわかりやすいのだろう・・・。

不思議な点がいくつかあった。一つ目は伸子が兆吉の認知症に中盤まで気づかないことだ。年齢、身なり、発言で何かおかしいことになぜ気づかないのか。気づいているが信じたくないのか。どちらにせよ怒鳴り散らしたり~していて見ていて違和感があった。

二つ目は由紀子が何故そこまで兆吉を嫌っているのかだ。確かに認知症になってしまった親の面倒を見るのは大変だろう。私には分からないが。だがだからといって家族だ。ましてやどこか行ってしまったことを把握している。認知症でお金も持っていなくご飯も買えない電車も乗れないこともわかっているのにも関わらず探さないのは見殺しではないか?ぶっ飛んでいる内容なら最後までぶっ飛んでいる。リアルにするなら最後までリアルに。中途半端が一番冷める。

三つ目はセリフにストーリー性がなく先が読めない。これは良いことなのか悪いことなのかわからない。だが私は先にシナリオを読んでから鑑賞してしまったから先が読めてしまった。これは仕方がないことなのだが。
 
授業で「演技を勉強しなさい」と言われてからまったく興味のなかった舞台を見るようになったが、役者さんたちの演技力の高さにとても驚かされた。DVDでの鑑賞なので台詞を喋っている人が抜かれてしまっているのだが、画面から見切れている役者を見ると圧倒的な表情・迫力にど肝を抜かれた。

本作は、仲代達也という大物俳優を見せよう見せようとして邪魔なものを全部省いたのが仇にでた。役者の圧倒的な演技力、仲代達也さんの舞台役者としてのキャリアや信念は大いに感じられた。だがこれは映画といえるのだろうか。映画は舞台と違い、時間を切り取れ、空間を切り取れ、場所も転々と移動でき、そこが映画の良いところであり魅力だ。
だが本作品は8割、上から空・砂浜・海の画だ。見ていて退屈で仕方が無かった。単調な構成に仲代達也さんという大物俳優が収まりきれずはみ出してしまっているように見えた。

若い子で『リア王』を知っている人は少ないだろうし、私は知らないし、これはお年寄りに向けた作品だったのだろうか。
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