海老

ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれたの海老のレビュー・感想・評価

3.6
個人的映画の日の3本目。最近有給を映画に使ってばっかり。

映画と関係ないのですが一つだけどうしても自慢したいことが。もともと大して混まない映画館が平日の夕方で閑散も絶好調でして、まさかの僕一人しか客がおりませんでした。夢の貸切映画館は嬉しいやら寂しいやら。恐る恐る脚など伸ばしてみました。いやー広い。(錯覚)


さておき。
かのボストンマラソンのテロに巻き込まれた青年の実話。最近実話ものが続いています。

アイトーニャのように面白おかしく描かれる事もなく、ホースソルジャーのように美談を強める事もしない、生々しくて息苦しいストーリー。主人公はどこにでもいる、ちょっとルーズな青年であり、彼の家族も含めて、特別温和でも人間ができているわけでもありません。
「テロを生き延びたボストンの強さの象徴」と勝手に祭り上げられ、家族さえも調子に乗り、振り回される。努めて愛想を振りまく主役ですが、チヤホヤされること自体は満更でも無かったのかもしれません。役者の表情から察するしかありませんが、こういう部分が何とも人間くさい。英雄に祭り上げられてもルーズな部分は治らず、リハビリもサボるし夜遊びもする。挙げ句の果てに献身的な彼女へ的外れの八つ当たり。
「ダメな僕」と言ってるだけあって、美しく懸命に生きる姿ばかりがクローズアップされるわけではないです。上等でもない普通の人間が、極限の恐怖を味わい、両脚を失う想像できない傷を負ったのだから、日常が歪まない筈もないと突きつけられるかのよう。
調子に乗って本人の気持ちも省みない家族親戚も大概です。正直言って嫌悪感を覚えるほど。
心にもない罵倒も、苛立ちを露わにするのも、追い詰められた人間なら誰しも取り得る行動で痛々しい。

それでも、本作では「それでも生きる」ことへ帰着するのが、人間の底力に希望を感じさせるのでしょう。
「ダメな僕でも生きる事を諦めない。」
「家族一同カスばっかりだ。それでも大切だ。」
と言い切ってくれる。
わざわざ副題に「ダメな僕だから英雄になれた」と付けたのは、ダメな奴でも生き抜ける事が、希望を思い出させてくれるという事だったのでしょう。

受け手によっては、単に登場人物に腹がたつだけになりかねない赤裸々(と思う)物語。なかなか刺さる話でした。


余談
本日でフリーパス最終日。
結構いっぱい観れました。15本くらいかな。
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