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ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれたのmeltdownkoのレビュー・感想・評価

3.5
甘えてるんじゃねえぞとでも言わんばかりのエリンの要求はすなわち、自らの傷を相対化せよ、ということであって、カルロスの告白がその触媒としての役割を果たしていく。俺は間違えて生き延びてしまったのだと思っていた、英雄の名に値しないのだと思っていた。だけど生きていたから家族やエリンは悲しまずに済んだのだ、見知らぬ誰かの救いとなったのだ、そして失われたものたちを取り戻すことができるのだ。この映画はテロ被害者であり、障害者であり、彼氏であり、息子であるジェフが、カルロスとの再開によって自ら置かれた文脈を別の目線から捉え直すにいたる成長の物語であって、中心となった事件はテロであっても、描かれているのは極めてパーソナルな関係と再生だ。
前半のジェフの困惑からは、国家の悲劇の象徴としての役割をひとりの人間に押し付けることの暴力性を暴いているようにも見えて、だとすれば要するにアメリカという国のあり方への異議申し立てなのであって(と同時に私たちが住むこの国もその考え方から言えば後ろ指をさされてしかるべきなのであって)こんな題材でずいぶんとラディカルな思想をぶつけてくるものだと驚いたのである。けれどやはり最終的にはジェフたちはナショナリズムと融和していくのであって、そういうつもりなら君たち勝手にやってくれないかと少しばかり私の心はささくれだってしまうのであった。ていうかジェフからエリンへの貢献が冒頭のアレだけなのはちょっとどうなんだっていうのもあるんだけど。
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