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ピュア 純潔のmのレビュー・感想・評価

ピュア 純潔(2010年製作の映画)
4.8
今やアカデミー賞女優になったアリシア・ヴィキャンデルのハリウッド進出前、母国スウェーデンでの主演作。
ちなみに邦題やキャッチコピーの印象とはまるで違う映画なのでそこは無視して良い。

経済的にも教養的にも貧しい環境で育ってきた主人公は、クラシック音楽に今の環境には無い光を見出し憧れを抱いている。ひょんな事からコンサートホールでの事務と受付の職を得た彼女は、親切に様々な本や知識を教えてくれる指揮者の中年男性に惹かれていくのだが・・

憧れ、苛立ち、喜び、焦り、絶望、そして希望がアリシア・ヴィキャンデルの眼差しに力強く現れていて、痛い程観客の心を突き刺してくる。

『若い女性に自分の知識や教養を与えて(ひけらかして)ある種の教育・支配をしようとする中年男性』という現実世界に腐る程いる男性像が、こうやって映画ではっきりと描かれているのは結構珍しい気がする。そしてこういう男の目的は大抵1つという事も。

リサ・ラングセット監督は現状から抜け出そうともがく主人公の心情をクールに見つめ続ける。富裕層と貧困層の間の見えない壁が可視化されていく。全編がひりつく程に痛い。

クラシック音楽を聴く主人公の顔のクローズアップで始まるこの映画は、同じようにクラシック音楽を聴く主人公のクローズアップで幕を閉じる。その表情の変化。彼女の中で最後まで変わらなかった、自分を支え続けたもの。お見事。



アリシアとリサ監督はこの映画でウマが合ったらしく、アリシアのスウェーデン時代にもう1本監督・主演で組んでいる上に、今年完成予定のアリシア初プロデュース作で再び監督・主演としてタッグを組んでいる。
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