津軽系こけし

MEG ザ・モンスターの津軽系こけしのレビュー・感想・評価

MEG ザ・モンスター(2018年製作の映画)
3.1
サメブランドは、金儲けじゃない


ハゲちょびんvsメガロドン
「ジョーズ」という衝撃的な作品の登場以来、愛すべき二番煎じ達が我こそはと果敢に己の”サメ”を表現してきた。彼らのサメは、時に宙を舞い、時に地上を歩き、時にはトイレから顔を出すなど、悪夢的なアイデアを効かせてきた。それはもはや「ジョーズ」のブランドから逸脱した独自のジャンルである。
時代が望まぬとも彼らはサメの映画を撮り続ける、なぜなら好きだから。私はサメ映画の魅力とは、制作者たちのサメに対するひたむきな愛情にあると認識している。荒れ狂うサメと、血飛沫・悲鳴を映すレンズの内には、サメを撮りたいという表現家たちの純粋な眼差しがある。そんなオタク達の途方もない試みによって、”サメ”というジャンルが築き上げられたのである。

さて、サメ映画の需要がメジャーに顔を利かせなくなった昨今にて、この映画は映画館にサメを蘇らせてくれた。潤いある予算と、ジェイソンステイサムという好敵手によって、現代っ子のわーきゃーも望める作品に仕上がっている。

ただ…

配給元が中国ということもあってか、必要以上に中国要素が取り入れられていること。また、「このリービンビンを世界へ宣伝しよう」というあからさまな商業嗜好が大いに邪魔をしてくれた。確かに、今作の打ち出すサメにも恐ろしさはあるし、ドキドキハラハラする場面も散りばめられている。しかし、本当にサメ映画をやりたいのであれば、もう少しサメを軸に据えたらいかがなものだろうか。
これではステイサムとアジア人の海洋ラブコメディといわれてもいたしかたない。言い過ぎと思うかもしれないが、この映画のしていることは、”サメ”というジャンルを組み上げてきた愛すべきオタク達に泥を塗っているのと同じである。

アメリカ様がサメを予算振り切って作ってくれたんだから、わがまま言うなっ!!という自己呵責もわかなくもなかった。しかしながら、それでも私は商業主義に飲み込まれたこの映画を”サメ”と括ることはとてもできない。
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