ひな

サマーフィーリングのひなのネタバレレビュー・内容・結末

サマーフィーリング(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

浮き上がるような地に足のつかない夏でも、風邪の日にみる夢のような夏でもない。寂しく、気怠げで、しかし世界は変わらず穏やかに進む夏。

ローレンスもゾエも、どこか眼差しは寂しく、心に穴が開いたよう。
そんな2人が寂しくて堪らないのが中盤。
世界は進む。
それは優しくも残酷でもある。
ローレンスは新たな恋人を、新たな本を書き始める。ゾエは離婚し、旧友に会いに行く。
サシャのいた部屋で恋人と過ごして、サシャに触れた手で背中をなでるローレンス。サシャが突然現れる気がするんだ、と言っていたローレンス。ゾエの中にもローレンスの中にも、サシャの濃度が少しずつ薄くなっていくのが、わたしは寂しかった。

これは死別ではなくとも、別れた恋人であるとか、死ぬほど悲しかったこととか、感じたことのある人全員がうなずけるはずで。
あれほど忘れたくない、忘れられないと思っていたことも、年月が経てば忘れてしまうんだ。都合の良さに、安心と腹が立つことがある。

そんな寂しさともやもやを引きずったまま最後の場面。そこで気づく。ローレンスの顔、やはり、わたしと同じ気持ちをかかえているのだ。

すべてを忘れたわけではない、しかし、忘れてしまうだろう。
そのことをうけとめたまま、何度も新しい気持ちで夏を過ごす。
サマーフィーリングは、我々が忘れた、忘れたく無かった、夏の日の気持ちそのものである。

いまの時期にみないと、旬が過ぎて、あと1年待つことになるので、はやめにみることをおすすめします。 

ただ歩いている、ただ自転車を漕ぐ、ただ人と場所を共有している、景色の中にある人の見せかたがよかった。
他の映画だとそぎ落とされてしまうような。
ひな

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