正直なところよくわからない映画でした。
ストーリー的にも「あれってどういう意味?」とわからないところがあったし、映画全体としてのメッセージ性も何を伝えるための作品なのかが掴めませんでした。
こういうよくわからない映画には、自分の感性の鈍さ、理解力の足らなさを棚に上げていつも3点前後を付けることが多いのですが、これはよくわからないながら、もうちょっと手を伸ばせばこの映画が伝えようとするところに届きそうな感じもあり、いや、もしかしたら「もうちょっと」ではなく「だいぶ先」のような気もしますが、それでも何か感じるところはあり、このスコアです。
あらすじは、若い夫婦が幸せに暮らしていましたが、ある日夫が事故に遭い亡くなってしまいます。その後夫は幽霊となり妻を見守る、というお話です。
とても余白が多い映画というのでしょうか。全体的にセリフは極端に少ない。
もちろんゴーストもしゃべりません。それどころか表情も一切見えない。なのに、ゴーストの心情が伝わってくるのです。不思議な感覚でした。
この映画の伝えたいこと、そのカギを握るのは恐らく映画半ばほどのパーティのシーンでおじさんが述べる持論だと思います。
それまでほとんどセリフがなかったのに、このおじさんがめちゃめちゃしゃべります。俳優さんの記憶力に脱帽です。
その持論とは、後世に自分の生きた証を残したいと思っても、それは永遠ではなくいつかは消える。それはベートーヴェンの第九のような名曲でも同じで、いずれ宇宙ごと消えてしまう、といったような内容。
このおじさんの話を聞いていたゴーストは、そこからかなりの時が過ぎていってもその場に留まり続けます。
ぼんやりとした解釈ですが、ゴーストは例え自分の生きた証が残せなかったとしても、自分の生きていた意味を見出したかったのではないかと思いました。
このゴーストに限らず、人間はみな自分の生きる意味を見出したい生き物なのではないか、と問われているようにも思えました。
結局何を伝えたかったのか掴みきれませんが、俯瞰した視点から人間の人生、人間というより人類を見つめているように感じる作品でした。
以下ネタバレあり
おそらく何百年、もしかしたら何千年とあの場所にとどまっていたゴーストでしたが、あの柱の隙間に隠されたメモの内容を見た瞬間に消えました。
その内容は何だったのでしょうか。私は、もしかしたらゴーストが生前に作曲した曲に対する妻の感想だったのでは、と思いました。
「曲を作ってもそれは後世に残せない」とのおじさんの話を聞き、生前に曲を作っていたゴーストは自分の生きた証を残せなかったことを悲観していたのではないでしょうか。でも、妻の心には残った。証は残せなくても、意味は残せた。そう思えた瞬間にゴーストは姿を消したように思えました。