【そして時代は廻る】
僕が小学生の頃、一本のゲームが世界を変えた。
「ドラゴンクエスト」
今でこそ何本もシリーズ化されるほどの押しも押されぬメガヒットシリーズの記念すべき第一作目。
それまでは小説や映画など「与えられたストーリーを順を追ってついていく」ことしかなかった空想の世界に、自分の意志が加わった瞬間だった。
大きなストーリーの中で、当然順番通りにミッションをこなさなければ先に進めないという点はあるにせよ、自分の意志で西に行くも良し、東に行くも良し、判断を誤れば死ぬこともある。敵があまりに強すぎて全く歯が立たず、悔しくてコントローラーを投げつけて画面がバグったことも・・・。
そうやって一つの旅を終えたとき、壮大な物語を読み終えたような達成感が生れた。
だけどそれは、もともと「指輪物語」や「はてしない物語」などが作ってきた土台に「いつか自分も旅してみたい」という純粋な少年の夢があったから生まれた一歩だった。
そう、ゲームの世界はそうやって広がっていった。
時代は流れた。
今やクリエイトの世界はビジュアルがリードを始めた。
何もないところに十人十色の空想を巡らせるのではなく、目で見た映像が「世界」なのだ。
そして、小説や映画はいつしかゲームを追いかけるようになった。
この作品は、まんま「ゲーム」の世界観です。
きっと中国に伝わる伝記がベースなのかもしれません。でもそういことではなく、作り方がまるで「ゲーム」なんです。
正義の味方が悪を倒すために旅に出て強さを身に着け、やがて悪を滅ぼすという設定はよくありますが、ビジュアルや人物像キャラクター造形に至るまで「ゲーム」を意識したとしか思えない匂いがプンプンするのです。
でもそれを否定するつもりはありません。
それはそれで時代のニーズにあったクリエイトだと思うからです。
だからこそ「これは『映画』だ!」という強烈な自己主張が欲しかったのです。