しゅんまつもと

夜明け告げるルーのうたのしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

夜明け告げるルーのうた(2017年製作の映画)
4.8
人生の中でとても大切にしたい一本にまた出逢えた。

秘密の友達との出会い。そのオープニングから心奪われた。父がかつて夢を追った痕跡であるカセットテープの音源をリミックスし、MPCを叩いて再構築する。
それこそ、手垢にまみれたジュブナイルを再構築し、現代に蘇らせようという高らかな宣言に自分は聞こえて、この時点で涙ぐんでしまった。

物語に点在する、都会で夢破れリターンした者たち。もしくは、それを選べず故郷に縛られた者たち。そのどれにも等しく優しい目を向ける。生き続けていれば良いことがあると。もう逢えなくなってしまった人にもきっと再会できると。

海の底にはきっと、幾つもの伝えられなかった想いや言えなかった言葉が沈んでいる。すべては掬いきれないけど、せめてと人は唄い、叫ぶ。「ずっと言えなかった言葉がある/短いから聞いておくれ/愛してる」

アニメーションが、映画が、物語が、音楽がもつ力のひとつは、現実を超えること。みんなが手を取って踊ることは難しいかもしれないけど、それでもハッピーエンドを願いたい。それをイメージすることはとても尊いことだと思う。