一見、当事者たちに介入して、争いから離れた、人間個人の生活に根ざした生ける声をゆっくりと撮っているように見えるけれどもそれは誤解で、土本のまれびととしての自覚はインタビュアーとしての自らの言動や、登場人物の祀り上げかた、編集で台詞や表情の変化を断ち切る瞬間の選択など、映画作りの技術一つひとつに染みついており、その冷徹な視線の強度を掲げることこそ対象者に深い慈悲の念を抱くことだと主張するようだ。土本の目の当たりにした大雪の白を見られるだけでも貴重なフィルムだし、揺れる漁船のへりからこぼれ落ちる雪の塊や、あの圧倒的な、打ち締められる魚の「顔」のクロースアップも素晴らしい。