竜泉寺成田

羅生門の竜泉寺成田のレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.3
世界の黒澤、初鑑賞。
最初は三船敏郎の役が本人の高貴さとちぐはぐであまりハマっていないように感じたり、京マチ子の演技がわざとらしく感じたりしたが、終盤それがあえての演出であったと思い知らされた。
ある殺人事件の真相をミステリー的に追いかけ、関係者の供述で印象が二転三転するというのは現代であればもう定番と化した手法ではあるけれども、供述内容がどれも矛盾していく様は見事で、さらにもう1人の語り手である杣売りによる三人称の語りにより、3人の供述の自己保身(だからみんなわざとらしい演技だった)が徹底的に暴かれていく流れは、大変小気味よい。
さらにそれだけでは終わらず、三人称の語り手である杣売りの欺瞞をも追求することで、物語における語り手の特権性を許さない姿勢は非常に文学的でもあるように感じた。
竜泉寺成田

竜泉寺成田