朝ごはん

羅生門の朝ごはんのネタバレレビュー・内容・結末

羅生門(1950年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

黒澤明の名を世に知らしめた傑作。
金沢武弘(森雅之)の死をめぐり、事件に関わった多襄丸(三船敏郎)、真砂(京マチ子)、そして巫女に取り憑いた武弘の3者が検非違使に証言する。しかし、それぞれの主張は全く異なる。
本作は土砂降りの羅生門で、杣売と旅法師が下人に対して事件を語るという形式を採る。しかし、杣売は事件を目撃していた。遂に杣売は自らが目にした事の真相を語り始めるのだが、下人は杣売が螺鈿細工の短刀を現場から持ち去った事実を隠していることを看取する。
いわゆる信用できない語り手が設定されており、事件がそれぞれの立場で脚色されていたことが暴露される。特に最初の三者はカメラに向って証言を、すなわち検非違使の視線を鑑賞者と同化させることによって、観ている私たちの判断を揺さぶる仕掛けを採っている。
クライマックス、下人は羅生門に捨てられていた赤子の身ぐるみを剥ぐ。芥川の『羅生門』よろしく、杣売は下人の悪を弾劾しようとするが、逆に下人に杣売のエゴイズムを指摘される。
しかし最後は杣売が赤子を育てることを決意する。土砂降りの雨は止み、赤子を抱いた杣売に光が射す。
真砂は悲劇の女性だが、その狂気の演技は圧巻である。殺陣のシーンも、見栄を張る多襄丸の語りでは見事なのに、それが杣売視点で描き直される時にはみっともなーい感じになっていて面白い。
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