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羅生門のごのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.1
毎日映画コーナー198

羅生門

実は見たことなかった黒澤明監督の作品

始めてみたけど、普通に70年前の日本でこんな作品が生まれていたのかとぶったまげた

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まず、言わずもがな映像が素晴らしい

白黒なのに、それを感じさせない迫力と演出

また、音楽も突然殺陣のシーンで無音になったり、ひぐらしの鳴き声が虚しさと共にこだましたり、とにかく一つ一つのシーンに見入ってしまった

関係ないけど、ひぐらしの鳴き声の駆り立てる残酷さや、女性の狂気の描写で、ひぐらしのなく頃にを彷彿とさせた

やはり黒澤作品は、いろんな作品にいろんな方面で影響与えてるんやねえ
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全員演技が半端ではない

女性役も、夫役も、多重丸も、誰もが迫真の演技をかますので、映像から目が離せない

夫役、少しだけジブさんに似てた

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日本人には馴染み深い、語り部により語られる物語として話は進む…かと思いきや、その語り部が沢山いてそれぞれ独自の解釈を繰り広げるのがこの映画のキモ

三人の話が食い違うストーリーの不可解さにかなり認知的不協和に陥るが、下人のセリフがこの映画本質をつく

「一体、正しい人間なんているのか。みんな自分でそう思っているだけじゃねぇのか。人間ってやつは、自分に都合のいい悪いことを忘れてやがる。都合のいい嘘を本当だと思ってやがる。そのほうが楽だからな」

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芥川龍之介の「藪の中」が原作であり、また羅生門というタイトルや下人の登場、服を奪うというようなストーリー展開からも彼のオマージュを感じる作品

それでも、最後には、お坊さんとキコリの間で、最後の人間という存在への希望が表明される

おもえば、人のカルマを目の当たりにし、映画を通して苦しみ続けたお坊さんが、それでも人を信じることができた、そんなラストである

みた直後は蛇足にも思えたが、これはかなり素敵なラストだったかも知れないと思いなおし、この点数をつけました
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