RK

SING/シング:ネクストステージのRKのレビュー・感想・評価

4.0
完全なる予定調和な物語なのだけれど、
傑作だった。
そもそも、「けれど」という接続詞がおかしい。予定調和なものは、文字通り「調和」なんであって、本来であれば心に安寧をもたらすものに違いないのだ。

であればなぜこんなにも、予定調和という言葉はネガティブなものとして使われるのだろう。多くの場合、何かしらの作品鑑賞の際の言語表現としてそれは用いられる。

まぁ早い話が、娯楽と芸術が混同しているから、いわれのない作品が批判されるんだな。今作品のように、極上な予定調和を意図的に提供しているものに対しても、稀に「予定調和だ」と難癖つける輩が現れる。

多分そうした人間は、製作陣の「意図」や、その作品の持つ公益性みたいなものを度外視して批判してしまっているのだと思う。この作品は「意図的」に「逸脱」させたのか、あるいはさせなかったのか、理解できてないから。だから多分そうした人は作品鑑賞において、「自分の許容範囲において」の「逸脱」しか認められない。

そうなると、その人間にはどういうことが生じるのかというと、たとえば、「予定調和という現象そのものをシニカルに眼前させる作品」の鑑賞方法が分からない。つまり会田誠の「犬」の持つ価値などは到底理解し得ないと思う。あの作品成立の条件には、既存の社会的制約や、性の歴史変遷があるわけで、それを完全にフリに使った作品であることは疑いようもないと思うのだけれど、多分彼らはそうした「意図」を汲めず、表層的な快不快で判断してしまうだろう。

娯楽と芸術の区別もついてないくらいだから、「犬」という作品が、「予定調和を描く」からもう一段階捻って、「人間が、持ちながらも秘匿してきた欲望を、そうした欺瞞から解き放ち、予定調和的に現前させる」ものだということなんて、分かりっこないのだ。

ということを、稲葉さんの美声を浴びながら考えていた。もっと集中して映画観た方が良い。
RK

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