Yoshmon

世界でいちばん美しい村のYoshmonのレビュー・感想・評価

世界でいちばん美しい村(2016年製作の映画)
3.6
初めて東京都写真美術館ホールにて鑑賞。

2015年4月25日にネパールで起きた大震災。その震源地とされる山岳地帯にあるラプラック村に焦点を当てたドキュメンタリー作品。

■ ネパールの実情
作品の構成は第1章で村で出会った少年アシュバドルと彼の家族、第2章で村で唯一の看護師ヤムクマリ、そして第3章で世界でいちばん美しいその村”ラプラック村”にそれぞれ焦点を当てたもの。

4,000人が暮らしていたラプラック村を襲った震災で、村の全ての建屋が全壊。
その中で家族や幼馴染を失った哀しみに打ち拉がれながら、生きていく姿を捉えている。

僕個人の話ですが、震災が起きた一年後の2016年のGWを利用して、マザーハウスのスタディツアーに参加してネパールを訪れた。
その際に目にしたネパールは、首都カトマンズでさえも一年経った後も建物や歴史的建造物までも倒壊や傾いたままで、これ以上倒れないように棒で支えているのみ。

作中のラプラック村ではないが首都カトマンズから四駆の車で約2、3時間の養蚕をしている農村にも行った。(マザーハウスではネパールのシルクを使ったストールを生産・販売している。)

そこでも目にしたのはトタン板の屋根の並ぶ復旧が途上の光景。

にも関わらず首都カトマンズでも養蚕の農村部でもそこに暮らす人たちはみんな穏やかでのんびりしていながら逞しく生きていて、農村部に関しては僕たちのような外国人が訪れたこともなかったらしく村全体で歓迎の踊りも披露してくれたくらい。
(カンボジアやベトナムといった他のアジアと重ね合わせて見ていた偏見が地震にあったのも事実。)

…でもネパールの人たちもその当時は苦しみ、涙を流していたことをこの作品を観て知った。

作中ではラプラック村で信仰されているチベットから伝わったボン教における、死者の弔いの様子も目にすることができて興味深かった。

■ 鑑賞後のトークイベント
東京都写真美術館での鑑賞後には今回初めて映画製作を手がけた”写真家”.石川梵監督のお話と、この映画のエンディングを飾る東北出身のユニット”はなおと”の生ライブも楽しむことができた。

石川梵監督のお話によると映画タイトルである”世界でいちばん美しい村”と言うのは、オーディエンスである私たちへの問いかけとのこと。
「美しい」とはその場所の風景ではなく、そこに生きる人々と、彼らの生き様を見て感じ、見出す私たちの心の中にあるもの、とのこと。
…ネーミングって難しいね。

■ 写真家 石川梵
今作は写真家が映画製作を手掛けることでも興味深かった。
ご本人の話では写真で伝えられることに限界を感じての、映画製作とのこと。

「メディア」としての切り口で捉えればその通りで、写真だと切り取ったその一瞬の時間の前後や、そのフレームに入らない背景や事実もあって、芸術としての写真ならイメージを膨らませることに趣があって良いけど、報道写真やノンフィクションの分野では文章が添えられないと正確には伝わらないから。

伝えたいことの音、連続する流れる映像も時には有効。
ドローンを使った撮影も美しいヒマラヤを望めて良かった。

そう言う意味では自らの足を運んで見にいくことも大切だし、もっといろんなところへ足を運んでみたい。

おまけですが農村部での歓迎の様子もシェアします☺︎↓
https://instagram.com/p/BOXT1s5Bs3e/
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