蛸

サスペリアの蛸のレビュー・感想・評価

サスペリア(2018年製作の映画)
4.1
アルジェント版の(鮮やかだがどぎつくすらある)色彩とは異なり、彩度を抑えた暗みのある落ち着いたトーンの色遣いによる映像が端正で美しい。
映像を一目見ればわかる通り、本作とオリジナルは別物と言っても差し支えないほどに表現のアプローチが異なる。
オリジナルはほとんど主人公の一人称視点で物語が進むが、今作では客観的な語り口が採用されている(ともすれば「魔女」たちの視点の方が際立っているが、これはクライマックスからオチにかけての仕掛けのために採用された視点だと思われる)。
その客観的な語り口が、今作の色彩表現を規定しているとも言えるだろう(表現主義的な人物の心情を反映したような色彩表現は、主観的な物語以外ではあり得ない)。
しかしクライマックスに至り、「視点が固定」されてからの鮮烈な「赤」はまさしくサスペリアかくやと言うべきもので、地獄絵図としか言いようがない惨事が素晴らしかった。


お話としては、事前知識が必要なところが多かったと思うので勉強してから出直したい。オリジナルと違い、舞踏団の「外」の世界も割と描くことで映画に広がりが出ているところが良かった。
幕終わりの、鮮烈なモンタージュや、ダンスシーンにおける、肉体の躍動感が効果音や息遣いが強調されることによって禍々しさを帯びてくるような演出など、印象的な箇所はたくさんある。
しかし間を持たせた演出も相まって、2時間半の長丁場を退屈に感じてしまう箇所もあったことは確か。
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