ねぎおSTOPWAR

彼女がその名を知らない鳥たちのねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

4.2
「凶悪」などの白石和彌監督作品。
率直に、韓国映画、ヨーロッパ映画に対抗しうる素晴らしい作品だと思いました。

主要登場人物は蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、竹ノ内豊。
まあどいつもこいつも人間のダメな部分を表面に描かれます。
蒼井優演じる十和子はクレーマー。時計の修理に関して文句垂れまくり。その時計店員として松坂桃李くんが登場・・。

是非ご覧いただき、監督に誘導されたおぞましい予感を味わってください。
そしてそれは・・・・。


《できれば前情報なしで観ていただきたいので、観終わってから下をお読みください》





目新しい手法ではないものの、どんな監督も上手に出来る仕掛けではありませんよね。周到なシナリオと、技術陣と俳優陣の理解によって観客は綺麗にミスリードされるわけで。
いやあ蒼井優さん阿部サダヲさん、おふたりの演技は絶賛されてしかるべきではないでしょうか。


蒼井優さんの役どころは王子様症候群というか、こと男のことに関してはいつまでも夢見る少女のまま生きている女性。経済的にも目の前の家事も全て年上の同居人?旦那?である阿部サダヲさん演じる陣冶に頼り切り。姉の言葉にも耳を貸しません。
そんな女性にかけられた魔法が解けるとき、陣冶の大空のような愛で隠されていた全てが明らかになるわけです。
陣冶に対しては可愛さなど見せない酷い女(同時に嫌だ!と言っておきながら甘える感じ も漂わせる)、そしていい男にはオーラをまとって近づく(と同時に本当は頭でまずい!と思っているだろうなと感じさせる )女 を上手に演じています。
これ、そこいらの女優と呼ばれる人たちには演じ分けられないんじゃないかな。底が見えちゃうはず。

また、既に名優である(はずの)阿部サダヲさんにとっても、この役はかつて演じたものとは異なるはず。<最初っから口を開けてくちゃくちゃ食べ、こぼし、靴下を横着に脱ぎ、足の指の間を指で掃除し、それを下に捨てる>そんな観る者を不愉快にさせる男を演じました。
そして最後に明らかになる<愛>。

天使のエピローグの前、ベンチのシーンまでは人間の浅はかさや醜さ、愚かさがあふれているので、当然観る人の感情は推して知るべし。そしてそこからの気分の変化に実際戸惑った自分がいました。究極の愛のストーリーでした。

<後記>
それにしてもみなさん、この作品のレビューが長い!!
それくらい観る人の心を揺さぶる映画だってことだと思います。
<追記 備忘録>
からくり部屋セット
壁が倒れたら浜辺だったシーン。セットをわざわざ建てたか。