「彼女がその名を知らない鳥たち」という映画を観た。
僕は、宿泊できる映画館として話題の「Theater ZZZ」というホテルで本作を観た。
本作の内容的に、僕一人では中々観る機会に恵まれなかっただろう。
映画も巡り合わせなんだなと改めて感じた。
調べて知ったのだが、本作のキャッチフレーズがかなり強烈で「共感度0%、不快度100%」だ。
率直に言うとキャッチフレーズに偽りはない。
ただ、おそらく皆様が思い描いているような作品ではない。
蒼井優の演じる最低な人間性の女性、そして彼女と暮らす不潔な男を演じる阿部サダヲ。
松坂桃李演じる不倫男。
竹野内豊演じる女性を道具にする男。
登場するのは大体が最低な人物ばかりだ。
だから当然「共感度0%、不快度100%」だ。
けれど物語終盤になると見えて来る真実が一人の人物の印象を大きく変える。
そしてその人物の姿が、この映画に漂う淀んだ空気を引き裂く光芒の様に思える。
共感度0%だが、終盤で描かれる一人の人間の想いにだけは少しでも共感したいと思った。
好きな人にどんな仕打ちを受けても、愛し続けることを多くの人は愚かだと笑うかもしれない。
けれど考えてみると、愚かだと笑う人々はこんなふうに人を愛せないだけなんだと思う。
僕らにはできないことをしているから、真面に受け止められないだけなのかもしれない。
本作は恋愛観を変える映画とも謳われていたが、確かにそうだと思った。