アメリカによる原爆投下に抗議をすることと、第二次世界大戦で日本が負けて良かったと思うことは両立する。
この映画は長崎に落とされた原爆によって家族を失った人々が何を恨んで何を抱えて生きていくべきなのかを提示しているが、日本の加害性が殆ど語られないために戦争の持つ本質を表現できていない。
アメリカに対して最大限の非難をしている点は悪くないけど、そもそも何故太平洋戦争が始まって原爆が投下されたのかを考えればアメリカだけに責任を押し付けるのはフェアではないはず。
原爆と戦争は密接に結びついているものだから、どちらかを切り離して考えることはできない。なので、後者が意図的か偶然か、どちらにせよ天災のような扱いをされているのは反戦映画としては微妙。
唯一、最後に父親が子どもに対して語る言葉は現代にも通じるもので、軍拡を肯定する言説に対しての、全ての戦争は自衛から始まるという根本的なメッセージは教科書に書かれててほしい。
あと、戦争に殺された人たちは平和のために死んだんじゃない。失われなくて良かった命が戦争を始めた権力者たちによって無残に奪われたのだ。もし平和のために失われた命だとしたら、死人の数が足りなかったね。