この子を残しての作品情報・感想・評価

「この子を残して」に投稿された感想・評価

HirodePaz

HirodePazの感想・評価

4.0
さすが、木下恵介監督。重い原爆をテーマにしながら、興味をもって見れる作品にしている。
広島23、長崎11
長崎の原爆投下を扱った映画は意外にも少ない。
しかも、広島の原爆投下は単独の題材になるのに対し、長崎はなぜか広島とセットで語られることが多い。
長崎単独の題材になった映画だとさらに少ない。
その中で3番目に古い作品。
「長崎の鐘」を著した永井隆博士とその家族の話。

大庭秀雄監督「長崎の鐘」
田坂具隆監督「長崎の歌は忘れじ」
いずれも、1952年までのGHQ統治下で検閲を受けている。
それから31年間も扱われなかった題材。
検閲を受けていない言論の自由が保障されて以降の作品としては一番古い。
すなわち、長崎の率直な気持ちを表した最初の作品と言える。

長崎と言えば、かつて天草四郎らキリシタンが潜伏した、キリスト教と縁の深い地。
それは、1981年のローマ教皇(ヨハネ・パウロ二世)の日本語スピーチから始まる…。
なお、2度目にローマ教皇(フランシスコ)が訪れたのは、38年後の2019年。
つい最近。
1981年も、2019年も、教皇の話を聞いている人々の姿が雨合羽なのは印象的。

長崎の鐘を元に作曲した古関裕而は、東京オリンピックの行進曲を作った。
不思議と現在とのつながりを感じる。

令和となり、戦前生まれの人が減り、ますますあの記憶は、歴史の中に埋もれてゆくが、唯一の被爆国としてはやはり忘れてはならない。
何があったても忘れてしまう国民性だれども、二度と戦争を起こさぬために、これだけは忘れてはならない。
本作は、決して面白い部類の作品ではないが、戦前を知らない私たちが記憶にとどめるためにも、一度は観ておいても損はない。
反戦へのメッセージがこれでもかと伝わってくる。
時を刻む秒針の音が、めちゃくちゃ怖い。
ラストソングの歌詞はトラウマ並みに怖い。

戦後76年。
今年も、あと数日であの日がやってくる。
wada

wadaの感想・評価

-
実はまだ見てなかったんだ…原爆に身内を11人殺され、老後を子どもたちと父の世話に捧げた祖母が、父以上に戦争の被害者だったと思う、という台詞。この台詞を入れるのは流石木下惠介だと思った。
ケロ松

ケロ松の感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

いつまでも後世に残していきたい映画。大竹しのぶさん演じる娘さんが思いを吐露するシーン、そして最後の永井博士の息子さんが昔を語るシーンと生々しいエンディングが、特に心に刺さった。山田太一さんは本当に価値ある優れた作品をつくる方だと思う。
木下恵介監督作品。

医学博士 永井隆原作の随筆も十年程前に読了。

比較的数少ない長崎の原爆投下の反戦映画。

面白いとかつまんないとかじゃなく、観ておいて良かった作品。
きらら

きららの感想・評価

4.0
原爆映画を集中的に鑑賞。
カラーだから、モノクロの「黒い雨」より凄惨というレビューもあったが、最後の原爆投下時の状況で一番衝撃的だったのは、断末魔を叫ぶような表情の真っ黒焦げの焼死体だった。他にグロテスクな部分は特になかった。
姪の大竹しのぶが突然登場するので、先にレビューを読んでいなかったら誰だか分からなかった。
人間模様の話は単調に感じたのと、親子の触れ合いがもっと描かれていた方が感情移入できた。
永井先生が子供達の為に本を書いてお金を残してあげたいという気持ちは分かるが、心のキャッチボールの描写が少ない。
「にんげんをかえせ」の歌とメロディが頭から離れない。
MileNyang

MileNyangの感想・評価

4.6
太平洋戦争末期の長崎が舞台のストーリーです。もうご想像はつく方が多いと思いますが、原爆投下後の家族を描いた物語です
49118yar

49118yarの感想・評価

1.5
長崎の原爆のお話。

昔の映画なので(技術的・映像的に)怖いと思う内容ではなかった気がします。(うる覚え)
ピカドンの部分は山の向こう側でそれを見たっていう感じのシーンでした。
長崎で被爆した医師永井隆博士の原作による映画。永井博士の映画は本作の他に「長崎の鐘」があり、こちらは永井博士の医学生の頃から結婚し医師として家族人としての半生が中心の作品で、原爆以降の部分は短い(永井博士が存命中の1950年に公開)。それに対し、本作は、1981年のローマ法王の来日時の反核の演説からはじまり、原爆投下直前に時間がもどり、永井博士の息子誠一の現在(1983年に映画は公開)の反戦の活動が描かれ、ラストは再び原爆投下時の惨状の描写に戻る。
永井博士の生涯を学びたいという人には「長崎の鐘」からの視聴をすすめたい。本作は、上記のように、おそらく意図的に時間軸は前後する。また永井博士に実際におこった史実と異なる部分や時間経過の正しくない部分は本作にはいくつかあるが映画のストーリー構成上のことと理解でき問題はない。
主演の加藤剛は、被爆後に供養のために散髪もせず髭もそらずに過ごした永井博士の生き様を好演。永井博士の、罪のない長崎の一般人が犠牲に捧げられたといった表現は、同じく罪がなく磔にされたキリストと重なり、被爆地にあらわれたアメリカ兵にすら怒りを見せない。真の平和に繋がる大きな広い愛の姿勢がここにある。
これに対して、戦争に対する怒りの部分はラストに挿入。共演者は、妻役の十朱幸代(出番が少なく惜しい)、その母役の淡島千景、被爆して顔にケロイドの残る女性の大竹しのぶ、被爆して瀕死となる看護婦役の麻丘めぐみ、誠一の妻役のひし美ゆり子らが光る。原爆シーンは被爆者のリアルな描写を試みてはいるが、むしろリアルなのは爆風で吹き飛ばされる前半のシーンと、後半の天主堂などが一気に木端微塵に吹き飛ばされるシーンで迫力。

以下の加藤(永井博士)のセリフは金言。

お前(誠一)と茅乃(娘)と例え最後の二人になっても、どげんののしりや暴力ば受けても、きっぱりと戦争絶対反対を叫びとおしておくれ。たとえ卑怯者とさげすまれたって、裏切り者とののしられたって、戦争絶対反対の叫びだけは守っておくれ。敵が攻めてきたときに、武器がなかったら、みすみす殺されてしまうではなかかという人が多いだろう。しかし、「汝の剣を鞘におさめよ。剣をとるものは剣に滅ぶべければなり」だ。敵も愛しなさい。愛し、愛し愛し抜いて、こちらを憎む隙がないほど愛しなさい。それにはお前が残していく子供たちのためにも、忘れてはいかん。1945年8月9日午前11時2分。長崎浦上で何が起こったかを。
重力

重力の感想・評価

-

このレビューはネタバレを含みます



音が、心臓まで届く…
すばらしいなこの映画
(あまりに良作だったので長い)

いやそもそも、のっけからパワーが全開。
あの拙い日本語のスピーチと、黒い画面に白文字で映る「この子を残して」。
この子、が親になって年老いた頃だろうか。
あのタイトルカットは、
胸ぐらを掴まれた気持ちになって、全部の時間がとまってみえた。人生で、一番あっけにとられたタイトルカットだった。
これは戦争に対する宣戦布告だ。

音が、観客と1945年の距離をぐっと引き寄せている。
時計のふりこの音と過ぎていく日常を淡々と描くことにより、
現代の私たちが持つわずかな原爆の知識を、なんとか経験にしようと試みている。

いつ、この日常がふわりと崩れるかわからない広い不安のなかで、なんとか笑って楽しく生きる人たち。
同じ経験を、観客は通ることはできなくとも、お願いだからその時が来ないでいますようにと祈る気持ちは、1945年の上空で交わったと思う。

否定したいことまで神の前では飲み込まなくてはならない瞬間がある。その意味で、信仰は犠牲を伴う。
原爆のときも、神の求めた犠牲だからと言い聞かせて納得したい人と、信仰ではぬぐいきれない不条理に異議を立てる人、またどちらでもない人が、全員描かれていたと思う。信仰があるために起こる、心の中の摩擦をそのまま映すことは、信仰ではどうにもならないようなことにどう向き合うかという命題にぶち当たる。
人類が絶えないかぎり、普遍の命題だ。

並木道で泣いてしまう息子の気持ちがわかる気がする。場所にある匂いや気配が、
亡くなった人をはっきりと縁取っていく様。記憶は、自分の頭の中でだけ抱えられるようなちっぽけなものではない。
場所を訪れてこそ、記憶がたもてるような気がする。

また戦争がおわったあとにある、
それぞれの戦いをきちんと捉えている。
生き残った者、助けることを諦めた者、
子供、後遺症、傷を負った者、
彼らが、一人で生きようとしないのは木下監督の願いもこめられているのだろうか。
自分を憎む必要がないときに、憎んでしまう。この地獄から救ってくれるのは、他でもない他者です。なぜなら、それぞれ違う痛みと癒しをもっているから。

意外だったのは、建物の重要性に気がついたこと。
焼け野原になった長崎に、教会が建ち鐘がのぼっていく。
荒野の中にみつけた水のように眩くて、
あそこを目指そうって思った人が何人もいたかもしれない。
建物という、大きくて、みえやすい人間の創作物は、一から暮らしを立ち上げるという意味でも大きな道標になっていたんだろうな。

最後10分、観客と永井の一対一の時間と言って良いだろう。
原爆を知らない人たちが、自分自身と対話する時間を丹念につくりあげた1時間50分があってこそだ。
この時間は、原爆の記憶を遺すことや反戦、戦争の被害者についてのみ訴える時間ではなかった。

セットやメイク、役者のまなざしすべてに覚悟と訴えがあって、両手で抱えきれないほどの言葉をうけとる。
どうしようか。と思った。

反戦に理由なんかいらん。戦争はするな。
戦争にも理由はいらん。するな。
理由もなにも求めるな、
過去をみればわかることだ。


そしてわたしは、木下恵介のつくる作品をとても気に入っている。
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