Jeffrey

テオレマのJeffreyのレビュー・感想・評価

テオレマ(1968年製作の映画)
3.8
‪「テオレマ」‬

‪冒頭、イタリア北部。

工業都市の郊外に住むブルジョワ一家。1人の青年が訪れる、性的混乱、崩壊の道、芝刈り、性行為、宙に浮く人、鐘の音。今、袋小路に追い込まれたブルジョワ家族と家政婦の奇跡を映す…

本作はピエル・パオロ・パゾリーニがT. スタンプとS. マンガーノを主演に、更にA. ヴィアゼムスキーも出演してる68年の作品で、これぞパゾリーニ真骨頂の1本で、決してソドムの市が最強の不条理映画では無い…

テオレマこそ真の不穏と理不尽な出来事を映し、目撃する彼の傑作である。

題名は"定理"を意味すると言うことだが、見ていてあーなるほど、5月革命の余韻が残っている作品だなとまず思う。

そもそもこの映画を見ていると個々の団体が変革していくような模様が写し出される。

映画のスタイルは彼らしく、挑発的な場面を含みつつ風変わりな映像、まぁシュールと言っていいだろう…の数々のショット(例えば、教会の屋根に浮く人や土に埋もれる女など)は観客に不安を与える。

それにしてもイタリアと言う作品には家族制度を炙り出す映画が結構ある。

室内劇を描いた大傑作ルキノヴィスコンティの家族の肖像を始め、数々ある。

本作もその一つだろう。
パゾリーニの初期の作品から順番に見ていると、如何にこのテオレマが異色作と言われる意味がわかる。

貧困層を描いたアッカトーネに始まり、中期作では古代ギリシャを舞台にしてきた彼の中間にある本作こそ、強烈な資本主義に対するメッセージが受け取られる彼の傑作だ。

それにしても彼の作品でイギリス人俳優やフランス人の俳優を起用するのは珍しいのではないか。

中でもマンガーノは完璧といってもいいほどの女性像である。「にがい米」を観て以来からあのフォルムに目がいってしまう…。

さて、物語はミラノ郊外に住む工場経営者のブルジョワ一家と1人の訪問者を軸に家庭とその男との共同生活が始まる。

後に家族全員は男のミステリアスな雰囲気の虜になり、男が家族の前から立ち去ると残された家族(夫、妻、娘、息子、家政婦)は奇妙な行動をしていく。

それは家庭の崩壊を表す予兆であった…と簡単に説明するとこんな感じで、本作の見所は数々あるが音楽を担当したモリコーネも撮影ルッツォリーニにも素晴らしい仕事をしている。

余談だが本作を映画祭側の主催者と揉めて結局映画祭自体が閉会中止になったりフィルムを没収されたり色々と事件が起きたらしい。

最早パゾリーニの作品では毎度のことだから驚かないが…。‬


‪ラウラ・ベッティの家政婦役も凄かった。近年スキャンダルで叩かれる政治家含む芸能人は沢山いるが、本当のスキャンダリストは間違いなくパゾリーニの事を言うだろう…。まだ、未見の方はこの不条理なドラマを観てほしい…傑作‬
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