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羊と鋼の森のmaiのレビュー・感想・評価

羊と鋼の森(2018年製作の映画)
3.4
これは何というか…テーマが散漫すぎる気がしました。

ピアノテーマの映画が凄く好き(というか音楽をテーマにしたものが好き)で、この作品は原作も読んでいました。
原作が特段好きというわけではないのですが、他の作品とは違って「ピアニスト」ではなく「調律師」に視点を据えたテーマ選びが純粋に好きだった作品です。

ただ、原作以上に映画の中ではテーマが散漫になってる気がしました。
もちろん、テーマが多いからといって全ての作品が散漫なまま終わるわけではないのですが、この作品に関して言えば「ピアノを通して自己を見つめる」という映画的には「静」のシーンや展開が多いので、どうしてもその「自己の内面」にフォーカスしたものになります。そうなってくると、自分の気持ちのどの部分と向き合うのかをしっかりと据えておかないと結局浅い映画になってしまうと思いました。

この映画で言えば、主人公は「自分のやりたいことが見つからない」「家族との距離感が分からない」「調律師として一人前になりたい」などなど自身の悩みに加えて、仕事に家族に…と悩みを抱えています。その悩みのひとつひとつは普遍的なものだと思うのですが、それら全てに決着点や解決策を見出そうとするのは無理だと思いました。原作にはかなり忠実ですが、どこかしらは省略しないと心に響く瞬間というのが薄くなってしまいます。

面白くないとは言わないし、キャストも揃っているんですが、出てくるキャラクターがことごとくいい人なので、波乱も何もないくらい「静」の映画に徹してしまっているのが惜しいです。
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