きり

メアリーの総てのきりのレビュー・感想・評価

メアリーの総て(2017年製作の映画)
3.8
『フランケンシュタイン』が好きで、そこからこの映画に辿り着きました。

‪美しく、とても不穏な作品です。音楽も、光も、声のトーンも。不安定な精神をそのまま現実にしたようで、虚構か現実か分からなくなる浮遊感に満ちていて。背中を氷の破片でなぞられるような、ゾッとする感覚を味わいました。
書き上がった『フランケンシュタイン』に対するシェリーの提案と、彼に現実を見るよう告げ一人で歩いたメアリーとの対比が、同じ時間を過ごしたはずの二人の相違すべてを表しているように思えました。クレアが共感の言葉を述べた時、この大切な姉妹が一緒にあってくれて良かったとも。

フランケンシュタインの傲慢と彼の怪物の純心と復讐が、この作品に垣間見えます。それだけに、ここではおよそ透明で分かりにくいウォルトンの善良の旅も気になります。メアリーの情熱は、個人的には冷たい炎のように感じますが、そのまっすぐさが一人航海を続けるウォルトンをふと思い出させるので。
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